■ 壊れたハートと悲しい恋の始まり2
「ゆきみに触るんじゃねぇ、一真」
『哲也…』
声に振り返ったわたしを真っ直ぐ見ている哲也。
わたしに触れていた一真の手がスッと離れた。
こんな風に兄弟同士で争うなんてそんな事してほしくないってわたしの想いは虚しく、中学生になった哲也はタカヒロと出会ってoneに入った。
そんな哲也といつしか敵対するようになっていた一真は、その頃の仲間を集めてZEROを結成させたんだ。
「思ったより早いじゃねぇか」
感心したような一真の声に、哲也はわたしの腕を引っ張って抱き寄せる。
完全に怒っている。
哲也の雰囲気が怒っている。
でもそれはわたしに対してじゃなくて、一真に対して。
一真をこんな風にしたのはわたしなのに。
仲が良かった二人を引き裂いたのはわたしなのに。
あの日一真を傷つけたのはわたし。
一真を裏切ったのはわたし。
言ってはいけないことを言ったのはわたし。
でもそれを哲也に言えないでいる汚いわたし。
一真への誤解を解けないでいるのはわたし。
閉じ込めた想いを隠す為に繰り返す嘘が、わたし自身を追い込んでいるって分かっていながら哲也に何も言えない弱いわたし。
もう、こんな自分は嫌だ。
『一真…ごめんなさい…』
大きく息を吸い込んで口から出した言葉はどっから聞いても震えていて、泣いているわたしを哲也はキョトンと見つめた。
掴んでいた腕がほんの少し緩んで、哲也との距離ができる。
「ゆきみどうした?」
困惑したような哲也の優しい声がわたしを包む。
同時に覗き込むみたいに哲也の顔が近づいた。
わたしと同じ色の哲也の赤い髪がそっと揺れた。
「何の¨ごめん¨だよ?」
その強い口調通り、分かってるって素振りで一真がわたしを睨んだ。
もうダメだ。
もう隠し通せない。
一真をこれ以上、傷つけられない。
…哲也に嫌われたくない…
それがわたしの懺悔の始まりだった。