■ 謹慎の理由2


『哲也?直人…』


ドッと大きな溜息と同時に視線をわたしから逸らす事なく、ググってわたしを抱く腕に力を込めた。

次の瞬間には、言葉を探しているように目線を逸らして、顔を歪める哲也。

哲也が出て来たって事で、青倉庫の外にいたoneの下っ端くん達に緊張が走る。

みんながわたし達を見ている。

見てないフリしてしっかりと見ている。


「謹慎だよ」

『学校じゃないのに?』

「あぁ」

『ん?』


見上げる哲也は、いかにも言いたくないって顔でわたしから目を逸らしているけれど…


「………」

『GWなのに…』


それを逃がさないように、哲也に顔を寄せた。

その瞳の奥に見えるのはほんの少しの羞恥っぽくって。

照れたような哲也の顔に、わたしの方が一瞬にしてドキっとしてしまう。


「俺の女にちょっかいかけるからだよ」


それは思いも寄らぬ解答で。


『え、それって』

「ゆきみのことだ」


そう呟くとわたしを離した。

クルっと向きを変える哲也は、やっぱり照れ臭そうで。


じつは哲也は魔法が使えるんじゃないかってすごく思う。

哲也が言う、魔法の言葉はわたしの生きる意味とさえ思えてしまう。

あんなに不安だらけだったのが嘘みたいに、わたしの心は快晴だった。


『謹慎しなくても』

「あぁ…直人も連れて来てやれ」


そう言ってわたしの頭をポンッとした。

その瞳は笑っていて、わたしは『うんっ!』って答えたんだ。


「ビビった〜…。哲也さんマジ怖ぇ〜っつーの!!もーゆきみちゃんマジ天然やめてくれ」


わたしをバイクの後ろに乗せたケンチは、わたしにヘルメットを被せるとそう、顔を歪めた。

その顔は本当に切羽詰ったような顔で。


『ご、ごめん!でも哲也別に本気で怒ってなかったじゃん』


苦しい言い訳。


「ゆきみちゃんは怒らんねぇだろうけど、俺らはちょっとした事でも許されねー事もあるんだけど…あー汗かいたわ」


額の汗を拭う真似をしてケンチが苦笑いでそう言葉を返した。



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