■ 親友の秘密9
『怒ってないよ。だってゆきみと哲也くんは、あたしの大事な友達だもん』
「そっか。……俺は?」
え………?
思考回路ゼロのあたしの髪をタカヒロは撫でていて、安心したような顔を見せたタカヒロはゆっくりとあたしを覗き込む訳で。
さっきよりも又少しあたし達の距離が縮まっている…
…気がするんだ。
分からない、分からないんだ。
タカヒロの考えている事が…
この質問、あたしは何て答えたらいんだろう?
これは、拷問??
タカヒロの言う「俺は?」に続く意味は。
友達だと思っているゆきみや哲也くんと同じように友達と答えるのも、何か違う気がする。
…友達はこうやって抱きしめたりしないよね?
でも、タカヒロには彼女がちゃんといて。
二番目の女…?あたしって。
なんて、何勝手な妄想。
そもそも、そんな男女な関係じゃないし、あたし達は。
『タカヒロ…?あの、意味がよく…』
「分かんねぇ?」
それなのに…
『分からないよ』
「教えてやろうか」
ズイッ…て、あたしの首に腕を回してそのまま視線をずらそうとするあたしの顎を掴まれた。
至近距離でタカヒロの綺麗な瞳と目が合う。
見つめる瞳は真剣で、なんていうか熱っぽい?
近くて…近くて…近くて…
なにこの急展開!
絶対キャラじゃない!!
そう頭の中では叫んでるのに、あたしはタカヒロから視線が逸らせない…
タカヒロはジッとあたしを見ていて―――
『え、んりょします…』
そう言うのが精一杯だった。
だって有り得ない。
ここにいるタカヒロはあたしのタカヒロだけど、ここから一歩出たら…ノリのタカヒロに戻るだけ。
ゆきみと哲也くんみたいなお互いが好き合ってるような雰囲気なんて微塵もない。
違った。
今でも信じられないノリの一言。
哲也くんがノリを好き?
それこそ意味が分からないよ。
「奈々…」
『はい?』
「やめた」
スッとあたしから離れていくタカヒロ。
その表情はちょっとだけふて腐れてるようにも見える。
離れてくタカヒロにホッとしつつも、心の奥が寂しく感じるのは何なんだろう。
やっぱあたしは魅力がないって事かな。
―――キス、されるかと思ったなんて。