■ 親友の秘密8
「奈々…」
『は、は、はっ、はい?』
つい出てしまったその声は、完全にアホ丸だしって感じでタカヒロに変に思われるんじゃないかって、若干凹んだ。
仕方ない、経験がないんだから。
そんなあたしの背中に回されたタカヒロの腕は、この緊張を解してくれるように上下に摩られている。
あたしの変な返しに対して気にも留めないタカヒロは、やっぱりこんな展開慣れたもので、そしてあたしよりも大人なんだと思う。
「ゆきみちゃんに言った。奈々のこと」
『…え』
タカヒロのことばかりを考えていたあたしに落ちてきた、少し低めのタカヒロの声。
顔をあげたあたしの瞳にはドアップのタカヒロが映っていて…
それはもう吃驚するくらい綺麗で、あたしはそのパーツ一つ一つに視線を飛ばした。
「ごめん、約束破った」
『あ、うん、いい…ゆきみなら全然いい…』
「哲也は最初から知ってた、それもごめん」
そうじゃないかって思ってた。
哲也くんだけは何でも知ってるんじゃないかな…ってそう思っていたから、あたしはそんなに驚かなかった。
むしろタカヒロが話してくれてよかったのかもしれないって。
自分からゆきみに言うのは、少し勇気がいる。
あたしを大事に思ってくれているゆきみだからこそ、こんな自分を曝け出すのが怖い。
でも、ゆきみに限ってあたしを変な目で見る事はないって、そこだけはちゃんと信じている。
ただあたしは、こんな世界をゆきみに知られたくないだけなんだ。
こんな汚い世界を、わざわざゆきみに知られたくないって思いがほんの少しあっただけ。
でもこうしてあたしの現状を知ったゆきみが、今後あたしに対して態度を変える事も、変な目で見る事もない訳で。
だったら、こんなあたしもゆきみに受け止めて貰えたらいい――なんて勝手かな?
『うん、全然いい』
「怒ってねぇの?」
いつもより優しいタカヒロの声とちょっと潤んだ瞳…
あたしの返事を少し緊張してる様子で聞くタカヒロが可愛い。
あたし如きに、そんな顔を見せるタカヒロがやっぱり可愛い。