■ 親友の秘密7


「だいぶ落ち着いたんじゃねぇか」

『うん』


俯くあたしはが思うのは。

タカヒロの靴を一足貰って玄関に置いておけばもう、親父はビビってあたしやお母さんに手を出してこないんじゃないかって。

今の今までタカヒロはあたしの部屋で待機している訳で、決してあの日以降親父と顔を合わせた訳じゃない。

そしたらもう、こんな風にタカヒロを独り占め出来なくなっちゃう…ってそう思うとやりきれない想いがあたしの胸の中を駆け巡っていた。


「そんな顔しなくてもちゃんと毎日来るから安心しろよ」

『え…』

「守るって言ったろ?」

『……』

「温っためてくれる?」


フワッとタカヒロの香りと冷たい肌があたしを包んだ。

ビクッと身体を竦めたあたしに、タカヒロの吐息がかかって有り得ない程の緊張があたしの身体を更に硬直させる。

それは、慣れてないからっていうのもあると思う。

だってこんな展開予想外で。


いつも…哲也くんにそうやってすごい愛されてるみたいなゆきみを見る度に羨ましいって気持ちがなかった訳じゃない。

でもそれはあの二人だからいいな…って思った訳で。

現に、タカヒロとノリのそういうじゃれあいはあたしには何の憧れも感じさせなかった。

実際、あたし自身が誰かにあんな風に愛されるなんて想像外の出来事で…

でもタカヒロと出逢って、タカヒロがこうして守ってくれて、あたしの事ちゃんと考えてくれているっていうのすごいことで。

みんなが憧れちゃうようなチームの総長をあたしは今独り占めしていて。

彼女を差し置いて、独り占めしていて…

タカヒロに触れられる事を考えるのは嫌じゃなくって。

うまく感情が追いつけないでいる。


あたしを抱きしめる腕に力を込めるタカヒロが、そっとあたしの髪に唇を押し当てているのを気づいていながら、気づかないフリをするあたし―――…



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