■ 幼馴染み2
「誰も見てねぇよ…」
普段は甘えた言葉使いの哲也が、こうやって男丸だしの時は、チームにいる時だけなのに…
そんな事考えてボーッとしているうちに、哲也の手はわたしの唇から頬に移動するように触れていて、この展開にわたし自身耐えられそうもなくって。
それなのに…
「答えろ?ゆきみは俺のもんだろ?」
『うん、そう』
ニッコリ顔の哲也のオデコがわたしのオデコにくっついた。
「ゆきみは俺んだ」
「哲也!行くぞ」
えっ?今いい所…
なんてわたしの想いが届くわけもなく。
その声に反応した哲也は、当たり前のようにスッとわたしから離れた。
声の主であるタカヒロとノリが廊下側のドアからこっちを見ている。
恥ずかしげもなくノリを後ろから抱きしめているタカヒロ。
今の今までわたしのものだった哲也は、簡単にノリを見つめてしまう。
何ともいえない切ない目でノリを見つめる哲也。
タカヒロにしっかり抱きしめられているノリを見つめる哲也。
―――わたしの哲也はもういない。
『はぁ〜…』
『ラブラブだね』
タカヒロ達の後を着いて教室を出て行った哲也の代わりに、奈々がわたしの席にやってきてそう笑った。
『見てた、よね…』
まだほんのり赤いだろう顔を下に向ける。
この奈々との会話でさえクラスの生徒たちは耳を澄まして聞いているかも…
どうやら哲也達は周りが見えないらしい。
というかギャラリーは関係ないみたい。
それを一々気にしてたら何も出来ないって、前にタカヒロが言ってた。
田崎タカヒロという人は哲也以上に人に優しい人かもしれなくて。
暴走族の頭とは到底思えない程に、みんなに優しくしていた。
わたしの事までも¨ちゃん¨づけで呼ぶ。
ただ、男子には厳しいみたいで。
下っ端の奴らは【one】に所属しているってだけでイキがってるのが多いから、よくその皺寄せ処理を哲也がやりにいく。
哲也は【one】の特攻。
信号なんか当たり前に無視で、いつお巡りさんに捕まってもおかしくない位置にいる。
わたしはそれをたまに怖いと思うんだ。
でも、離れたくないんだ。