■ 親友の秘密5
だから今ここでわたしが自分の想いを口にしたら、哲也はどんな風に返してくれるんだろうか?
自然とわたしの中で、不安は消えていた。
哲也の温もりをギュッと握りしめるとそれに気づいたって顔で、哲也はわたしに視線を向けた。
『あの、わたしは?』
「ん?」
『わ、…わたしと哲也は崩れる?』
「崩れねぇよ」
別に抱きしめられたわけでも何でもないのにわたしは全身熱くて、たったその哲也の一言が嬉しくてたまらなかった。
『ふふっ…』
繋がってない方の手で口元を隠して笑うわたし。
恥ずかしくて嬉しくて歪む顔を哲也に見られないように…
「やっと笑ったな」
『え?』
不意に振り返ったわたし。
どうやらしっかりそんなわたしを見ていたらしい哲也は大きく息を吐き出すと後部座席のシートにグタ〜っと背中をつけた。
「お前、不安出しすぎだぞ」
『え!…』
「分かりやすくて面白れぇけど」
『な、』
「あー…直人シメとかねぇとなぁ」
『ちょ…』
窓の外の土砂降りを見つめていた哲也が、急にこっちを向いて。
その目は何ていうか…
熱っぽい――――
こんな哲也初めて…
そう思うわたしの髪に哲也の指が絡んで。
すくった髪にそっと口付けた。
ほんの一瞬の出来事だったけど、哲也の動きがスローモーションにかかったみたいにゆっくりで。
薄い唇が開く瞬間も、わたしは哲也から目が離せない。
ゆっくりと開いた哲也の口はゆっくりと動いて、哲也の熱っぽい視線を身体いっぱい感じるわたしは、恥ずかしくて哲也から目を逸らそうとするけど
それすら許されなくて…―――
「もういいか?」
『………』
何も言えないわたしの腕をグイッ…と自分に寄せる哲也…
スローの哲也がゆっくりとわたしに近づいて…
見つめる瞳は真剣。
こんな至近距離で哲也を見るのはそうそうなくて、わたしはしっかりと目を開けている。
―――でも、スローモーションの哲也の瞳がそっとわたしの前で閉じられて…
何が起こったのか理解した時にはもう、わたし達は…
―――――――――…
わたしの人生、哲也で始まって哲也で終わりたい…
哲也がいればもう、何もいらない。
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