■ 親友の秘密4
泣き出すわたしを哲也はきっちり抱きしめてくれたけど、中々涙は止まらなくて、奈々に気づいてあげられなかった自分が嫌で嫌で仕方なかった。
親に暴力を奮われるってどんな気持ちだよ?
「でも奈々ちゃん、ゆきみちゃんが声かけてくれたこと、すげー嬉しかったって…友達一号って言ってくれたこと、一生の宝物だって…」
わたしの涙腺に拍車をかけたタカヒロの言葉はどこまでも優しくて、それと同時に奈々を大事に思ってくれていたことに心から感謝した。
「これが俺のいない理由。後は二人の問題だな…」
チラッと哲也を見たタカヒロは立ち上がった。
「そろそろ送らないとな」
青倉庫に行かなかったのは奈々がまだいるからだって、今更ながら分かった。
奈々には勿論、わたしに対しても気を使ってくれる優しいタカヒロ。
「ゆきみ、今日は帰ろう」
哲也の言葉に素直に頷くと、タカヒロの家の前にわたし達を送る送迎車が止まっていた。
後部座席に哲也と乗ったわたしは、手を振るタカヒロに視線だけずらした。
すぐにもう一台の送迎車がタカヒロを乗せて発進したら、哲也がわたしの手を握った。
あんなに哲也に対して不安だった心が晴れていく。
『哲也…?』
「心配すんな」
ちょっとだけ掠れた声でそう言った。
もしも奈々がタカヒロを好きになったら?
タカヒロとノリは結局わたしにとって憧れの存在であって。
でも、どうしてそんなにまでしてタカヒロが奈々を構うのかなんて、わたしには分からない…
それが恋愛感情だったら尚更吃驚だけど、タカヒロに限ってそれはないだろうし、中学の時から相思相愛だった二人…
哲也でさえ入り込めない二人の間に奈々が入り込める訳もないだろうし…
『タカヒロ…奈々のこと…』
「違うだろ」
『そうだよね、あの二人は崩れないよね』
「あぁ」
あまりに哲也の返事が早くて、わたしは少しだけ安心した。
考えてみれば、確信をつく言葉を哲也が言ってくれたことはないけれど、それはわたしも一緒かもしれない。
哲也が哲也がって思っていたけど、わたしだって今まで哲也に対して何かを言ったことがないと思った。
言わなくても分かってるなんて甘い考えだったなんて。
自分ばかりが哲也に求めていたことを少し恥ずかしく思う。
大人気ないよねわたし…。