■ 親友の秘密3
【side ゆきみ】
「上がって」
大きな家を見上げたわたしに聞こえた声はタカヒロのもので。
バイクを止めた二人は、わたしに視線を飛ばしている。
えっと…ここは、タカヒロの家?
すごいデカイじゃん!!
不安気なわたしの頭を撫でる哲也の瞳は優しい。
「俺も一緒だから大丈夫だ」
躊躇がちで引け目なわたしの腕を、哲也がグイグイ引っ張って、ちょっと強引に家の中にあがった。
一階はというと美容室になっていて、どうやらタカヒロはここの息子のようで。
タカヒロに対して興味を示さなかったわたしは初めて知ったんだ。
なんでわざわざタカヒロの家になんか連れて来たんだろう?
青倉庫でよかったんじゃないの?
「とりあえずシャワー浴びておいで、風邪ひいちゃうから」
優しくタカヒロにそう言われたけど…
さすがに人様の家でシャワーを借りるのはわたしも抵抗がある。
哲也の家ならまだしも、タカヒロの家って。
躊躇しているわたしに、バスタオルと何故か女用と見られる着替えを手渡すタカヒロは、わたしをバスルームに押し込めるように肩を押した。
『だだだ、大丈夫だよ、わたしそんなつもりじゃないし』
慌てて出るも目の前にはもう哲也しか立ってなくて、心配そうにわたしを見ている。
でも、その瞳はすぐに大きく揺らいで。
ちょっとだけ悪戯っ子な瞳に変わる。
特攻服をヒラヒラと揺らせながら哲也がわたしに一歩近づいた。
微かに香る哲也の香水にわたしはドキっとする。
「一緒に入る?」
『なっ!…』
パタンとドアを閉めて仕方なくシャワーを借りた。
でも内心哲也の冗談であろう言葉にドキドキしながらも、借りたシャワーで温まった体のままドアを開けると、そこには服を着替えた哲也がいた。
「おいで」
哲也にそう優しく言われて、三階のタカヒロの部屋らしき所に入った。
「怠くない?大丈夫?」
タカヒロが気遣ってくれる言葉にわたしは小さく頷いた。
「すげぇ哲也に怒られた」
そう言ってカラっと笑うタカヒロは、いつにもまして優しく見えて。
「泣くなよ?」
そう言って片手でわたしを抱き寄せた哲也の言葉を堂々と無視をしたんだ。