■ 親友の秘密2
「お前いつも一人だったし」
『え?…』
「哲也とケンチが逃げた公園にお前がいてすげー吃驚した。だからもう逃がさねぇって思った」
すごく最近の出来事だけど、少し懐かしむような顔のタカヒロの口端は緩く上がっていて、専ら意味不明なタカヒロの言葉を理解できずにいる。
『一人って?』
「あー学校」
そうだよずっと一人だったよ、ゆきみに会うまでは。
『知ってたんだ…』
何て答えればいいか分からなくて、でも素直に思った事を言ってみた。
「あぁ」
それだけ言われて、すごく恥ずかしくなった。
でも『なんで?』って肝心な理由が聞けなくて、あたしはやっぱり俯く訳で。
「なぁ奈々…」
またドキッとする。
『…はい?』
無駄に緊張して答えたあたしに、
「誰かに任せたくねぇんだ、出来れば俺が守ってやりてぇ。だから俺がこうやって毎日奈々の家にきてもいいか?」
思ってもみない言葉をくれた。
こんな安心できる環境、親父の暴力が始まってから初めてで、あたしは一瞬にしてこの温もりを離したくないって強く思った。
『……』
あたしは胸がいっぱいで、言葉にならなくて。
小さく頷いたら、そんなあたしの髪をクシャッてタカヒロの大きな手が触れた。
「一つだけ、守ってくれ」
そのままあたしの髪の毛先に触れたまま、真っ直ぐに見つめるタカヒロの強い瞳…
「チームの奴らには関係ねぇから、絶対に誰にも言うな。ゆきみちゃんにもだ。…意味分かるよな?」
タカヒロが言ってるのはさっき電話で言ってたこと。
単独であたしを守ってくれてる事が誰かにバレた時に、万が一あたしが嫌な事を言われたりするかもしれない。
それを避ける為に黙秘しろと。
それは、チームではあたしとタカヒロは一切何の関係もないってこと。
でもそれが、タカヒロにとっての守りだってこと。
だからあたしは頷いた。
「ここにいる時は甘えていいからな」
目眩がしそうな言葉をくれたタカヒロ…
この人を独り占めしている彼女は、どんなに幸せなんだろうか…