■ 好きすぎて…5
【side ゆきみ】
「自分、ゆきみさんの頼みなら何でも聞きますよ…そんな寂しい顔しないで下さい。…命かけてゆきみさんを守るよ…」
直人の精一杯の告白。
哲也から逃げたいってそんな馬鹿な事思ったわたしは、直人の告白に応える事すら許されないんだろうな…
完全に囲まれたわたしと直人は観念したようにバイクを停めた。
前から来る銀色のバイクはもう、涙で霞んでボヤけていて。
わたしを下ろした直人は超歯を食いしばって構えている。
『直人ごめんっ、ごめんねっ』
そう言うわたしに直人は優しく笑って首を横に振った。
『わたしが悪いの、わたしが暴走したくないって言ったの!だから直人は悪くないの、お願い殴らないで!』
ドカドカ歩いてくる哲也の腕を掴んでそう言った。
哲也は困惑の表情を見せていて、でもどうやら直人に手を出す気はないらしくわたしの抵抗に足を止めた。
「びしょ濡れだな」
「直人ちょっと来い」
哲也とは反対側にいたタカヒロがバイクに跨がったまま直人を呼んで、すぐに直人がタカヒロの所に駆け寄った。
何かを喋っていて、すぐに戻ってきた直人は哲也に頭を下げるとわたしに視線を移した。
「ゆきみさんすいませんでした」
そう言ってわたしにまで頭を下げる直人。
『直人謝らないで!わたしが悪い!』
「いや、自分の責任っす」
やりきれない想いが沢山あるのに、一人で去って行く直人を止める事も追い掛ける事も出来ない。
結局の所、わたしなんてちっぽけな人間は哲也を止める事も出来なければ、直人までも追う事が出来なくて…
自分がどんだけあさはかな弱い人間かって思い知らされる。
哲也と一緒にいると自分がどんどん弱い人間なんだって、しらしめられるような気分だ。
「ゆきみ乗って、話がある」
バイクの後ろに抱き上げられて乗せられたわたしは、やっと哲也の温もりに触れた。
ほんの少しだけ離れていたその背中は、わたしにとってかけがえのないもので、後ろから強く強く哲也に抱き着いたんだ。
そうしてまた土砂降りの中走り出した。
どこに向かっているのか分からないそこは、初めて行く三階建ての家だった。