■ 好きすぎて…4


行き先は聞かなくても分かる。

ゆきみを捜しに行ったんだって。

なんだかんだで、結局哲也くんだってゆきみがいなきゃダメじゃないのかな?ってそう思える。

ゆきみが『哲也以外好きになれないんだ』って言ったその言葉は、哲也くんだって「ゆきみ以外は好きになれない」って言ってるようにも聞こえた気がした。

やっぱりあたしには理解出来ない。

深く深く考え過ぎてんじゃないかな…って思わずにはいられない。

でもそれは、そんなあたしの甘い考えは

意外な人物の言葉で見事に崩れ落ちる事になる―――




―――――――――――





『ココアでいい?』


ドキッ…

お言葉に甘えてシャワーを借りたあたしは、まだ濡れた髪のままVIPに入って行った。


『うん…あの洋服これ…』


既に自分が纏っている服を指差してあたしは彼女を見る。


『あたしの、とりあえず着ててよ』

『ありがとう』


そう言って長いソファーに腰を下ろした。

暖かいココアは甘くて美味しい。


改めて見ると、やっぱり綺麗な顔してる…

真っ白な素肌にピンク色の唇。

短い髪は清潔感溢れてて小さなえくぼが印象的だった。


『タカヒロも哲也も、ゆきみ捜しに行ったから』

『うん』


静かな部屋。

物音一つしない…


『奈々…だっけ?』

『うん』

『友達って、ゆきみだけ?』


顔を上げると、彼女…ノリはしっかりとあたしを見ていた。

あたしと同じココアのカップを両手で持っていて。

あたしは声に出さずに頷いた。


『そう。…ゆきみ…あたしの事嫌ってるでしょ?』


更に吃驚して、あたしは目をパチクリさせる。

そんな話し聞いた事なかったけど、ゆきみがこの部屋に入らない理由の一つとして、それはノリがいるからとも、タカヒロがいるからともとれるわけで…

っていうか、この人こんな喋る人だなんて思わなかった。

そりゃ学校ではいつもタカヒロがついてるから誰だって怖くて近寄らないもんな…


『え、なんで?』


そう聞いた事が間違いだったのかもしれない。

































『哲也はあたしを好きだから…』


静かな部屋が凍りついたんだ。



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