■ 好きすぎて…2
「直人」
低い声で名前を呼ばれた直人は、少し驚いた表情を見せつつもすぐに駆け寄った。
「はい、哲也さん」
「乗せてやれ」
わたしの背中を押して直人に差し出す。
そのままわたしの髪を撫でて、哲也はタカヒロとノリのいる暴走車の方に歩いて行った。
その背中を見送るわたしは、やっぱり胸が痛い。
自分から突き放したくせに、ほんの一瞬前の出来事をもう後悔しているなんて。
「ゆきみさん大丈夫っすか?」
『え?』
「泣いてるみたいっす…」
直人がそっとわたしの頬に手を添えた。
背を向けた哲也にバレないように、気づかれないようにわたしに触れる。
鼻の奥がツーンと痛くてわたしは俯いた。
どうしたらいいか分からなくて、下を向いてるわたしは涙がボロボロ零れてしまって、こんな姿哲也に見られちゃいなけい…
わたしが泣く事を嫌がる哲也…
面倒臭いってきっと思われる。
『直人、隠して…』
わたしが言うのとほぼ同時、直人がわたしの背中に回ってあっちからの視界を遮るように立ってくれた。
泣いたら困るって、面倒臭いって思われたくないって、だから直人に隠して貰ってる分際なのに、それでも哲也に気づいて欲しいって…
「どうした?泣いてんのか?」そう言って欲しいって思うのは、やっぱりわたしの我が儘なんだろうか…
「………」