■ コイバナ7


『タカヒロ、何かしてるの?』


ノリが怒るのも無理ないのかもしれないけど。

さすがにわたしだって気になる訳で、そう聞いてみたけど哲也が答えないって事も分かっている。


「ゆきみが心配することじゃねぇよ」


やっぱりそんな分かりきった答えだった。

いつものわたしならすんなり引き下がるんだろうけど、どうにも哲也への想いが溢れて余裕がなくなっていた。

だから単なるきっかけに過ぎないんだろう…


『わたしだって心配ぐらいするよ』


ムスッと可愛いげない言葉に、哲也はちょっと吃驚したような視線を向ける。


「ゆきみ?」

『心配もしちゃいけないの?』

「そうは言ってねぇよ」

『じゃあ教えてよ?』


引き下がらないわたしは、完全に哲也を困らせてるだけだって分かっている。

そんな自分に嫌気がさしてくる。

頭の中とは裏腹に口は勝手に動いていて…


「知ったらゆきみ泣くから」


少しだけ哲也の口調が優しくなった。


『え?』

「泣かせたくねぇ」


そう言って哲也がわたしの髪を撫でた。

まるで、子供を宥めるかのよう。


『泣かないよ…』


困ったような顔を飛ばす哲也は、ゆっくりとわたしをその場で抱きしめた。




「―――困らせんなよ」


続けてそう呟いた。

その声は、哲也にしては冷たいっていうか、なんていうか。

面倒くさそうな気もしないでもなくて。



だから―――その時初めて感じたんだ。


一緒にいるのが辛いって…




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