■ コイバナ6
【side ゆきみ】
『今日はタカヒロの所行っていい?』
VIPの中、奥のフカフカなソファーは壁を向いて置いてあって、いわゆる二人だけの空間。
そこにはタカヒロとノリが座っていて、ここ最近タカヒロとコミュニケーションがとれていなかったらしいノリが爆発した。
「ごめん今日も無理だ」
煙草を吸いながら小さく答えるタカヒロに、ノリは極めて不機嫌になる。
別にノリが我儘言ってる訳じゃないのは分かってるけど、タカヒロは一体何を隠してるんだろう?
『どうして?』
「しばらく無理そうだ、ごめんな」
宥めるようにノリの短い髪を撫でて肩に腕を回す。
そのまま髪に何度も唇を埋めるタカヒロ。
『哲也、二人にして』
ノリの声に、ソファーで煙草を吸っていた哲也は煙草を灰皿に押し付けると、わたしの手を引いてVIPを出た。
哲也はこんなシーンを何度も体験しているんだろうなって。
表情一つ変えない哲也を、少し切なく思う。
哲也だって、これからこの二人が何をするかなんて分かっているのに。
そういう事…モードのノリのお願いを黙って聞く哲也。
辛くないのかな…?
辛くない訳ないよね。
わたしだって、哲也とノリがそんなことします宣言されたら、普通じゃいられない。
でも、何も言わない哲也はVIPを出ても、その表情を変えずにいた。