■ コイバナ4


ヴォオオン!

確実にエンジンをかける前に言われた言葉は聞こえていたのに、あたしは聞こえないフリをするしか出来なくて、でもそれさえも自分が無駄に照れてしまってどーしようもなかった。

ゆきみだけならまだしも、ケンチ本人にもからかわれるなんて。

質問にさえ答えてくれないし。

何も言えないあたしを抱き上げてバイクの後部座席に乗せるケンチの口端は、ほんのり緩くて。

あたし達が噂になっているの知ってんだ…って思うと、少し恥ずかしくなった。


でもケンチはそんな事何も気にしないって態度で接してくれてるから、あたしは色々楽だった。

そーいうケンチの優しさが、大好きだった。

でも、男心の分からないあたしは、結局ケンチが質問にちゃんと答えてくれなかったから、ゆきみに対して何の助言も出来なくて。

そんなあたしの質問にしっかりと答えてくれたのは、直人だった。

あたし達より先に青倉庫にいた直人は制服の裾をガッツリあげてバイクを弄っていた。

隣にしゃがみ込むあたしに気づいてニッコリ笑った。


「奈々さんこんちは」

『こんにちは直人。あのね…』


来て早々ケンチと同じ質問を直人に飛ばす。

キョトンした顔の直人は一瞬照れたような笑いを浮かべた。


「まぁ、両想いなら我慢出来ないんじゃないすか…自分は出来ればずっと一緒に居たいタイプなんで…超愛情注ぎますよ…両想いならね」


そう語る瞳は遠くを見つめていて、その先にはゆきみがいるんだって思えた。

だから¨両想いなら¨って直人は無意識に言ったに違いない。

自分が側にいてあげられるならどんなにいいかって、直人は思っているんだろうな。



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