■ コイバナ3
『気持ちがあるならそういう気分になるんじゃないかな〜って。男の心理なんて分からないけど、哲也はわたしにそういう事は絶対にしないから。だからわたしの片想い………永遠の』
『えっ?』
『おしまい』
最後にゆきみが何て言ったのか、正直聞こえなくてあたしは聞き返したけどれど、ゆきみはもう話を終えてしまった。
勝手に両想いだと思っていたあたしだけど、ゆきみの話を聞いても、やっぱりそれでも二人は両想いなんじゃないかなって思いのが大きかったんだ。
――――――――――…
『大事な女ほど手は出せないものなんじゃないの?』
「はぁっ?なんだって?」
いきなりそんなこと言ったら吃驚するよね、そりゃ。
ヘルメットを受け取ったあたしはケンチに会うなりそう口にしたんだ。
哲也くんは6時間目が終わっても起きなくて、SHRが終わるとムクッと起きた。
眠そうに目を擦って、ゆきみに視線を向ける。
右頬に手の後が着いててちょっとだけ赤くなっていた。
「倉庫」
そう言うなりゆきみの腕を掴んで教室から一番に連れ出した。
哲也くん、…聞いてた?
絶対聞いてたんじゃないかな?
寝てるフリして聞いてた前科があるし…
ゆきみは腕を引かれながらもあたしに振り返って『彼氏!来てるよ(笑)』って又言ったんだ。
そうして正門を見るとバイクに跨がったケンチがいたから走って出て行った。
哲也くんのバイクは学校の裏側に止めてあるらしく、もう二人の姿はなかった。
そんな訳でいきなり素っ頓狂な声を出すケンチの気持ちも分からないでもない。
『ケンチはさ、両想いだと思った子にはちゃんと¨好き¨とか言う?』
「え、なに?奈々ちゃん好きな人いんの?」
『はっ?』
自分にフラれてびっくりしたあたしに浮かび上がるのは、またしてもタカヒロ。
「なに、違げぇの?」
つまらなさそうにケンチがそう言ってバイクに跨がった。
『ケンチ、欲しいものある?』
あたしの言葉にかけようとしたエンジンを止めて振り返ったケンチの顔は珍しく真剣で…
「…―奈々―…」