■ 叶わぬ想い7


それはお昼休み。

ゆきみはあの日以降、あたしと一緒にお昼を食べるようになった。

お弁当のあたしは、哲也くんとパンを買いに行くゆきみを一人で待っていて。

戻って来たゆきみと二人でお昼を食べ終わったあたし達は、日課になりつつある食後のジュースを買いに自販機へ行った。

携帯メールを見ていたゆきみがバツの悪そうな顔で溜息をつく。


『どうかした?』

『あー…うん…』

『哲也くん?いいよ行ってきなよ』

『ごめんね…』


何度も謝るゆきみに笑いながら手を振って見送ったあたしは、ピッと一人アップルジュースのボタンを押した。

ガコンっと落ちたジュースを取り出して一人裏庭を歩いていた。

何でここに来たのかは自分でも分からない程で、あたしはボーッと大きな木を見上げていた。


思い浮かべるのはタカヒロの事で。

だから気づかなかったんだと思う。

きっとずっとチャンスを狙っていたんだと思う。

あたしがゆきみと離れるチャンスを。


気づいた時には沢山の女子達に囲まれていて、身動きのとれないような状況で。

一人に後ろから羽交い締めにされたと思ったらパーンと平手打ちが飛び交った。

何が起きたのかすぐに理解できて。

叩かれた左の頬がジンジンするのに、二度目の平手打ちが飛んできた。

まるでそれはストレス発散をするかのようで、そんな腹いせまがいの平手打ちをあたしは受けるしかなかった。



- 59 -

prev / next

[TOP]