恋心2
6時間目が自習になった俺達は、さも喜んでみんなで遊びながら話をしていた。
「あー女欲しいな〜。誰か合コンセッティングしてよ!」
野郎どもの嘆きは次第に熱を帯びていって。
「やべぇ18までに捨てないと…」
「俺じつは先月…彼女と…」
「はぁ!!!マジで!?」
胸倉を掴む勢いで喰いつくクラスメイトに俺も紛れて笑う。
「何か果てしなく違う世界の生き物かもしんねぇ、女って。すげぇ柔らかくていい匂いで、極めつけは…エロイ!お前らよく聞け!性欲に満ち溢れているのは男だけじゃねぇぞ!女だって欲まみれだ!それが最高に嬉しいけど!」
鈴木の話を聞いて俺の脳内はなぜだかゆきみが浮かんでいて。
女って女は、俺にとってゆきみと美月ぐらいしかいなくて。
だからついうっかり哲也の彼女だってことも忘れて、ゆきみの肌を想像してみる。
「それから女はキスが大事!俺達男は挿入が何よりのもんだと思うけど、女ってもんはそこにいきつくまでの前戯命といっても過言ではない!諸君、覚えておくように!!」
まるで大学の講義のように、いつの間にか鈴木の周りには男子が集まっていて。
俺は半信半疑適当に聞き流しながらも、脳内ではゆきみが一枚一枚制服を脱いでいって…
【直…早くぅ…】
真っ裸になったゆきみに手招きされた所で、慌てて正気に戻った。
ブンブン頭を振ってゆきみを追い出す。
なんだよ俺。
馬鹿みてぇ。
はぁーっと小さく溜息をつくと、鈴木の視線が俺に飛んできた。
「直人、誰で想像しちゃった?」
「誰もしてねぇよっ!」
「またまた〜。どーせゆきみちゃんだろ!」
分かってるなら一々聞くなよ…
そう思いながらも俺は否定も肯定もしないで肩に絡みつく鈴木を払った。
「ど〜せって、ゆきみは哲也の彼女だから…」
そう口に出して何だか気持ちがめっぽう落ちた。
いやいや分かってるし、認めてる。
哲也もゆきみも好き同士なんだって。
お似合いじゃなねぇか、アイツラ。
ザ:ベストカップル!!!
「直人さ、気づいてないの、お前…。自分がゆきみちゃんのこと好きだって…」
鈴木、何言ってんの?
俺は否定の意味も込めて鈴木を睨みつけた。
「そんなわけないだろ。ゆきみは哲也の彼女で俺にとっては大事な幼馴染だよ。美月だって姉ちゃんみたいに慕ってるし、だからそんな気持ち持ったこと一度もねぇし!」
それはまるでさも自分に言い聞かせるかのように思えた。
今までゆきみを女として意識したことはマジでない。
いつだって俺と哲也の間にいたゆきみ。
だからこれから先もそうだってずっと思っていた。
「じゃあ何でそんなつまんなそうな顔してんの?あの二人がうまくいっちゃって本当に嬉しいならもっと笑顔なんじゃない?…俺が思うに、ゆきみちゃんと哲也が付き合ってから直人、全然笑ってないよ」
「そんなわけねぇーって!!」
バン!!!
机を叩いて立ちあがった俺は教室から出て行った。
思いっきり首を振って頭の中からゆきみを消す。
水道で頭から水を被ったら少しだけ落ち着いた。
俺は哲也もゆきみも裏切るようなことはしないし、そんな気持ち絶対に持たない!
持つはずがないんだって。
ドクドク高鳴っている心音を誤魔化すように放課後を迎えた―――。