幼馴染みの距離3




「あははは〜直人が喧嘩なんてすげーよマジで!」

「お兄ちゃん玄関でぶっ倒れてすっごい吃驚したんだよー。笑い事じゃないよてっちゃん!」

「直人にしたらよくやった方だよねぇ」

「ゆきみさんの為に頑張っちゃったね、お兄ちゃん!」

「俺の彼女だぞー直人のやろー!」




ポコっと哲也の鉄拳が俺に刺さった。


パチっと目を開けると見慣れた天井。


聞こえた声は美月と哲也のもん。


あれ、ゆきみは!?



ガバッと起き上がった瞬間、身体のあちこちが痛てえっ!



「いってぇっ!」

「あ、お兄ちゃん!大丈夫?」



美月が俺のベッドの下に座っていて、身体を乗り出して顔を覗きこまれた。



「いたたたたっ…泣きそう痛くて…」



涙目でそう言うと、ブハッてみんなが笑うんだ。

笑えねぇぞ!!



「直人、お疲れ!」



俺の勉経机に足を組んで座っている哲也がそう言った。


キョロキョロ部屋を見回して…「ゆきみっ!もう大丈夫だからっ!」手を伸ばしてそう伝えた。


早く早く安心してほしくて。

安心させてあげたくて。



美月の横にちゃんと座っていたゆきみ。


俺を見てニヤッと笑ったんだ。



ベッドに身体を乗せて下から上目遣いで見つめるゆきみ。



「直ちゃんありがとお!」



ニコッて笑うゆきみにホッとして、背もたれに身体をあずけた。


何か言いたげなゆきみはそのまま嬉しそうにしていて。



「あれ?お前らデートは?」



俺の言葉に哲也が呆れたように眉毛を下げた。



「直人が邪魔したんだろ!美月ちゃんから電話かかってきて、直人が倒れたって、そりゃ吃驚して駆けつけるって。仕方ねぇからこのままいつも通りみんなでやろーぜ!」

「あー悪い。いやでも俺ちょっと寂しかったよー」



そう言いながら無意識で俺はゆきみの手を掴んでいて。

それをヘとも言わず握り返すゆきみ。

これがゆきみの温もりで、俺達幼馴染みの距離って奴。



「ふふ。直ちゃん今日はやけに素直だねっ!」

「なんだよ、いつも素直だよ俺は」

「可愛いなぁーもう!哲也、直ちゃんハグしてもいい?」



クルリと振り返ってわざわざ哲也に確認するんだ。

余裕なのか哲也は「ハグぐらいどーぞいつでも!」両手を広げてニコッと笑った。



「理解ある彼氏だなぁ、哲也!」



ゆきみの小さな呟きの後、「直ちゃんありがとっ!大好きだよっ」フワリとゆきみの温もりが落ちた。

シャンプーなのか、香水なのか甘い香りがしてドキドキする。



「俺何も気づいてあげらんなくてごめんな」



ギュッとゆきみの背中に腕を回すと「えっ、見えないっ!てっちゃん腕退かしてよっ!」美月の声が聞こえた。



「子供は見なくていーの!」

「あたし子供じゃないよっ!」

「子供だって、美月は!」

「ひどーい!お兄ちゃんとゆきみさんのハグー」

「おい、そろそろ離れろよ!」



哲也の声にゆきみがそっと離れた。

何となく胸の奥がツンと痛い。



「よし、クリスマスパーティー始めようっ!」



ゆきみが美月を連れて部屋から出て行った。


俺達のクリスマスパーティーが幕を開けた。







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