幼馴染みの距離2
その男は意外にもすぐに見つかった。
隣の市にある栄斗学園のニ年で。
「あ〜ゆきみちゃん、ゆきみちゃんなぁ。ちょお待ってや今思い出す…。ああ、分かった思い出した!スズちゃんカットの子や!それがどないしたん?」
「どないって…いい感じだったんじゃないの?ゆきみと。今日ってイヴでしょ、普通デートとかするもんだ…」
「ちょお待ってって!俺別にゆきみちゃん好きなんて一言も言うてへんよ。あっちには好きや言われたかもしれんけど…。それに処女って面倒くさいやん、せやから途中で止めたわ…」
俺の言葉を遮ったくせに、そんな最悪な話が続くなんて思いもしなくて。
そのチャライなりに、ゆきみは騙されたんだって理解した。
ふつふつと怒りが湧いてきて。
「お前ふざけんなよっ!ゆきみのこと馬鹿にしやがって!!」
身長もほとんど同じくらいの俺達。
思いっきり力の限りそいつの胸倉を掴んで睨みつけた。
「なんやねん、お前。土田と同じ目しやがって…。調子のるんもたいがいにせえや」
哲也もやっぱこいつんとこ来たんだってのがそれで分かったけど、どうにも怒りの感情は止まらなくて。
生まれて初めて殴り合いの喧嘩をしたんだ。
「お兄ちゃんっ!!大丈夫っ!?」
ボロボロの身体を引きずりながらやっとの思いで家に辿り着いた俺は、玄関に入ってすぐぶっ倒れた。
妹の美月の声がどんどん遠くなってく。
―――ゆきみ、もう安心だからな。
そう言ってやりたくて。
だけど身体のいうこともきかず、俺の意識は吸いこまれるように消えていった。