測れない好き3




ムニュっと唇に触れたのはゆきみの手の平。

俺の鼻から下を手で思いっきり押さえている。



「ぐ、ぐるじっ…」



息が詰まって涙目になる俺に「あ、ごめん」あっさり手を離すゆきみ。



「殺す気?」

「だって直ちゃんがキスしようとしたから…」

「ダメなのかよ?」

「ダメだよ、私哲也としかキスしないって決めたから」



ごもっともな言葉だった。

くっそ〜。

ムウって唇を突き出す俺を見てクスっと笑うゆきみ。




「でもちょっとドキドキしたよ。世界で一番好きって言ってくれて…」

「ほんと?」

「うん。直ちゃんのことは、世界で二番目に好きだよ私…」

「一番は?」

「哲也」

「直人って言って?言うだけでいいから。嘘でもいいから、言ってくれねぇ?」



なんて馬鹿なことを?って思うけど…



「嘘は言いたくないよ、直ちゃんには」

「…じゃあ順位いらねぇから、もう一回好きって言って?」



我ながら女々しいというか、アホなのか。

どう攻めたらいいのかさっぱり分かんないから、ただがむしゃらに気持ちを伝えるだけの俺。

美月の言うかけひきがどれほどのもんなのかも分かるわけもなく…

それでもゆきみを独占したい思いだけは滝のように流れ出てきてしまう。



「…好きだよ、直ちゃん」



そんな俺に結局甘いゆきみ。

もう一度抱きしめて、そのまま勢いまかせにゆきみが止める暇もないくらい素早くチュっと唇をくっつけた。




「ちょっと…」



そう言うゆきみにもう一度隙を見てキスをする。



「もう、直ちゃんダメ!」

「好き…」

「ずるいよ、それ…怒れなくなる」

「怒られても構わねぇ、キスしたい―――」



逃げるゆきみに隙あらばチュって触れるだけのキスを繰り返したせいで、俺の買ってきたかき氷は当たり前に溶けてジュースに変わっていた。




- 19 -

prev / next


TOP