測れない好き2




「直ちゃん!どうしたの、こんな時間に…」



善は急げ!って、俺はとりあえず苺のかき氷を買ってゆきみの家に行った。



「一緒に食おうと思って」



そう言ってコンビニ袋をゆきみに見せる。

それを見てパアーっと顔を明るくさせて。



「わ、すごい!アイス食べたかったの!あがって!」

「うん」



久しぶりに入るゆきみの部屋。

ドアを開けた瞬間、甘い香りがした。

ゆきみと同じ甘い香り。

なんだろこれ。

ついゆきみの腕を掴んで肩に鼻をつけてクンクン匂った。

あ、甘い…



「げ、なに?私臭い?」



怪訝な顔で俺を見るゆきみに首を振って否定する。



「いや、すげぇ甘くていい匂いだったから…」



そう言ったら嬉しそうに笑ってくれた。

ドキっと俺の心臓が音をたてた。



「香水!哲也に貰ったの。いい匂いでしょ〜」

「…哲也にかよ」

「そうだよ〜!あ、ヤキモチ?」

「…んなわけねぇだ…―――いや、そう…。何かやだ」



そう言ってゆきみの腕を自分の方に引き寄せてその中におさめた。



「…直ちゃん?」

「うん?」

「何で抱きしめてるの?」

「…分かんない。手が勝手に…」

「なんだそりゃ。ほら離して?アイス溶けちゃうよ?」

「…もう少しだけ…」

「………」



仕方ないって感じ、ゆきみがその場でジッとしている。

柔らかい温もりに俺の手は自然とゆきみの髪を撫でていて。



「んふふふ、くすぐったい…」

「好きだよ、ゆきみ…」



いつどのタイミングで言えばいいのかなんて分かんねぇ。

けど、今言いたかった。

ゆきみを抱きしめてる今、俺の気持ちを伝えたかったんだ。



「知ってるよ」

「もっと分かって…」

「どれくらい好きなの?」

「え?」



俺の腕の中で俺を見つめてそんな言葉を飛ばされた。

ど、どれくらい!?

哲也ならどう答える?

ロマンチックなあいつだから「星の数よりいっぱい…」とか言いそうな気がした。

比べて俺は…




「測れないよ…しいていうなら…この世界で一番好き…」



答えが正解なのか間違いなのかなんて分からないけど、俺の精一杯はこれだって思う。

腕の中のゆきみがほんの少し表情を硬くしたように見えて…

そっとゆきみの頬に手を添える。



「好きだよ、ゆきみ。すげぇ好き…―――俺を見て…」



このままゆきみが俺を好きになってくれないだろうか?

哲也のこともすっかり忘れて俺だけを見てくれないだろうか?

ゆっくりとゆきみの唇を見つめて顔を寄せる。

動かないゆきみをいいことに、俺はその柔らかそうなゆきみの唇にそっと自分の唇を重ねた――――





―――正確には、重ねようとした。




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