恋心3
「直ちゃん何歌う?三人でカラオケ久しぶりだねっ!」
ドリンクバーでミルクティーを淹れながらゆきみが笑顔で聞いた。
…ドキっとして思わず一歩ゆきみから離れる俺にキョトンと首を傾げる。
ジーっと俺を見つめて「熱でもあんの?元気ないね?」…前髪のあがった額にゆきみの真っ白い手がそっと重なる。
途端に触れた所が熱くなって「離せよっ!」思わずゆきみの腕を振り払った。
その衝動でゆきみがバランスを崩して…
「あぶなっ!」
哲也がゆきみもミルクティーも守ったわけで。
「直人、なんだよ。ゆきみに何すんの」
「いや悪い、ごめん」
謝ったはいいけど、その次の言葉が出てこなくて。
哲也のちょっと怒ってる顔が見れなくて…
「直ちゃん?本当に具合悪い?」
懲りもせず俺の腕を掴んで下から覗き込むゆきみにやっぱり身体がカアーっと熱くなってジワリと変な汗が背中をつたう気分だ。
「いや、そうじゃない。でも俺、お前らと一緒にいない方が…」
「なんで?せっかく久しぶりの3人なのに。私のこと嫌い?」
…ゆきみはよくこの言葉を使う。
――わ、た、し、の、こ、と、き、ら、い…?――
何でそんなに不安がるのか分かんねぇけど、小さい頃からそう言って自分の存在を確かめているようにも思えた。
その度に哲也は「大好きだよ。俺がゆきみをお嫁さんにしてあげるから!」そう言ってきた。
だから二人が今一緒にいるのは当たり前のような当然のことで。
そこに俺が入る隙間なんて最初からカケラもなかったんだ。
「すき、だよ…。嫌いだって思ったことなんて、一度もねぇから…」
ポンってゆきみの頭を撫でると、安心したように微笑んだ。
その笑顔に、胸の奥がギュっと苦しくなる。
だめだ、絶対にだめだ。
ゆきみの相手は俺じゃない。
哲也だって。
頼むからそんな風に笑いかけないでよ。
俺どうしたらいいのか分かんなくなる…
「哲也、私これ聴きたい!」
一曲目にゆきみが選曲したのはドラマの主題歌でもあった「TRUE LOVE」。
俺達の大好きな曲。
「じゃあゆきみの為に…歌います!!」
マイクを握った哲也は身体ごとゆきみの方を向いて、甘い声を奇麗に響かせた。
口に手を宛てて惚れぼれ哲也を見つめるゆきみをただずっと見つめていたんだ。
―――どうかその視線が俺に向かないように。
俺が隠れてゆきみを見ていることに、気づかないようにって…。