気になったこと
「臣くん、卵割って!」
「はいよ〜」
ポコって片手で卵を割ってボールに入れていく俺を見て美月がポーっと俺を見上げた。
「ん?」
首を傾げて美月を見ると「かっこいい…」小さく呟いたんだ。
へ?
かっこいい!?
言われ慣れてるっちゃ慣れてるけど…そういうことじゃねぇよな?
「え、顔が?」
思わずっつーか、調子にのってそう聞くと美月が若干困ったように目を逸らした。
「ちょっと、目逸らすなって?」
「え、だって、顔もまぁまぁだし…何て答えればいいのか分かんない」
まぁまぁ…は初めて言われたけど!
そんな反応が面白ろ可笑しくて俺は卵を握っていない方の手で美月の頭をポンポンっと撫でた。
「まぁまぁかっこいいならいいや」
「だって。あんまりかっこいいっていうと、調子にのるでしょ?直ちゃんはゆきみさんによくそうやって言われてすごいいい顔しようとして失敗してたから…」
…何となく想像できる、美月の兄ちゃん達。
「あのさ?」
「んー?」
「”てっちゃん”と美月は何でもないよね?」
「へ?」
キョトンとした顔で俺を見上げる美月。
あえて店長じゃなく”てっちゃん”呼び。
美月がそう呼ぶなら俺も…なんて女に合わせてこうやって何かするのが結構楽しいことなんだって初めて気づいたかも。
「ゆきみさんと付き合ってたんだよね?てっちゃんは…――美月じゃないよね?」
「…―――う、ん」
…―――!!!!
なんだ、その間は!!!
おいおいおいおいおいおいっ。
いや今のはさすがに俺も分かる。
怪しくないなんて思えない!!
ジッと真剣に美月を見つめると、ちょっとだけ気まずそうに目を逸らす。
逸らしたな、やっぱ逸らすんだな…?
目の前に美月がいるってのに、もし何かあったとしても終わったことなんだろうけど…
胸糞悪い。