過去一の抱き心地
ギュっと俯く美月を抱きしめる。
カフェでバイト働いてるからか、珈琲豆の甘い香りが美月から漂っていて心地よい。
サラサラな髪をスッと指ですくうと「うー」って美月が声にならない声を出した。
「告白の返事は、美月?」
「…無理。絶対無理…」
「ちょっとちょっと、俺すげぇ待ってんのに!」
「言わない!恥ずかしいもん!!言わなくても気づいて!?」
「…まぁ気づいてはいるけど。美月の言葉で知りたいんだよねぇ俺…」
抱きしめるとすっぽり腕の中におさまる美月は、今までで一番と言っても過言じゃないぐらい抱き心地がよくて、俺のモチベーションも自然とあがってく。
このまま抱いたら怒られる?
ここに文句を言う直ちゃんやゆきみさんはいねぇけど…
やっぱ最初っから二人の信用を裏切るような行為はダメ?
あまりに抱き心地がいいせいか、自分自答していた俺は美月を放置していて。
「臣くん…臣くんっ!!」
気づいたら美月がムゥってした顔で下から軽く睨んでいる。
そっと頬を撫でてニッコリ微笑むと「うん?」首を傾げて美月を見つめる。
「恥ずかしいから離して…」
「やーだ。美月が好きって言うまで離さねぇ!」
「えっ!ズルイ!言えないって言ったじゃん!」
「それでも聞きたいもーん俺!」
「無理、無理、無理だよ…」
「なんでよ?俺のことキライ?」
質問に黙って首を左右に振る美月。
若干涙目で本気で焦る美月がもうすげぇ可愛くて。
頬に手を添えてそのまま俺の方を向くようにして顔を寄せる。
抵抗するかと思ったものの、思いの外真っ直ぐに俺を見つめる美月はポーっとしながらも俺がくるのを待っているようにも見えて。
キスすれすれの所で、スッと上体をズラしたんだ。
目を閉じる寸前だった美月が、え?って顔で目を大きく見開く。
「ばかばかばかっ!なによ、もうっ!」
ここ一番の美月のムゥって顔が降りてきた。