買い物
スーパーについてカートで籠を押しながら適当に食材を放り込んでいく俺。
自分一人だとほとんど料理もしないわけで。
元々バーで働いていた時に一通りの料理は覚えたからできないわけじゃないけど、片付けるのが面倒な俺はわざわざ自炊する気にもならなくて。
だから色んな食材に加え、必要なもんを籠に入れていると、美月が俺の腕を掴んだんだ。
「臣くん誰がこんなに食べるの?」
眉間にシワを寄せて俺を下から見つめ上げる。
だからニコっと微笑んで「俺たち」そう言うと、頬をぷうって膨らませて首を振った。
「ダメだよこんな無駄遣い!今日作るものだけでいいの!」
そう言ってポンポン籠の中身を戻していく美月。
慣れた手つきでスーパーを物色しつつ無駄らしいものを返していった。
パタパタと小走りしている姿がすげぇ可愛くて、思わず顔が緩む。
なんなら眉毛まで下がってるんじゃねぇの、俺。
「臣くん、アイスは?」
「はは、食う?」
「うん、デザートはやっぱアイスだよね?何が好き?」
「何でも食うよ俺」
「好き嫌いは?」
「ん〜ほとんどない」
自分が味覚オンチだってことは分かってる。
よく隆二がここの店すげぇうまかった!って言われて行くけど、ほかの店との違いが正直さっぱりわかんなくて。
「美月、トンカツ食いたいな〜」
「え、トンカツ?」
「うん。ダメ?」
「いいよ、臣くんが食べたいもの、何でも作るからあたし!だから…」
グイって美月が俺の腕を引っ張ってそこに抱き着く。
さっき無意識に直ちゃんにしていたその仕草。
癖なんだろうけど、俺以外の男には絶対すんなよ!なんて無駄に独占欲が溢れそうにもなるわけで。
「ん?」
「あたし以外の女の料理、食べちゃダメだからね?」
…―――――家までどうやって我慢すんだよ、全く。
可愛すぎる美月の頭をそっと撫でた。