恋を引き継いだ時1



子供の頃、遠足だったり楽しみなイベントがある肝心な時に熱出す奴がそういうやいたな…なんて思ったんだ。


「二人には帰って貰ったよ、臣…」


そう言って微笑むのは俺の愛する奈々。

直人さん宅に居候している奈々は今夜俺の家に泊まりに来たわけで。

見張りに隆二と健二郎くんをつけたものの、家について数分で俺はぶっ倒れるくらいの高熱を出した。

慌てて横になったものの、一応メンバーにうつったらヤバイって判断で、奈々が隆二と健二郎くんを帰しちゃったんだけど、マジでヤバイのは俺の方。

高熱出した状態でなんもできねぇけど、自信はない。

いやいや俺がここで男見せなきゃ、貰えるもんもなんもなくなっちまう。


「今お粥作るから待っててね」

「………」


やべ、クソ可愛い。

めちゃくちゃ頭痛いけど、今この瞬間が最高に幸せだって思えて緩んだ頬がいっこうに直らなかった。


「臣、ちゃんと寝てて。起こしてあげるから」


心なしか、二人っきりのこの状況を楽しんでいるように見えなくもない奈々。

え、楽しんでる?いやいやまさかな。

今まで熱なんて出したらしんどいだけで絶対ぇ風邪なんてひくもんかって思ってたけど奈々が看病してくれるのなら、なんだってプラスになるのかもしれない。

恋とは、こんなにふわふわしたもんだったんだ。

いつの間にか眠りについていて。

どれくらい時間がたっただろうか?ポンって肩を叩く奈々の温もりにパチっと目を開けた。


「お粥できたよ、食べられる?」

「食う。つーかすげぇ腹減ってる…」

「あんな熱高いのに?」

「うん。だって初めてじゃん奈々の手料理」

「ただのお粥だよ…」

「それでも俺にとってはすげぇ嬉しいことだから…」


ベッドに腰掛けている奈々の細い腕をギュっと掴む。

そのまま指を絡めると奈々が小さく笑った。

脳内でエンジェル広臣が大きくバツを作っているのが分かる。

その横をデビル広臣が颯爽と通り抜けていって…


「奈々…」


抵抗しないのをいいことに、俺はその腕を引き寄せて奈々と二度目のキスをした―――――…





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