過去を超えて3



「ほんとによかったの?」

「え?」

「直人さん家じゃなくて?」

「うんだって、ゆきみだって直人さんと二人きりでいたいはず。あたしだって臣と一秒も離れたくない…」


あの後奈々を連れ出して俺の部屋。

もう何も誰も俺達を止めるもんがなくて、しばらく夢中で奈々を求めた。

ひとしきり愛し合ってベッドの中でまどろんでいる俺達。

奈々の髪に顔を埋めて緩く抱きしめる。


「一秒も?」


頬に指を滑らせるとぷーって頬を膨らませて顔を伏せた。


「だって、好きなんだもん…」


素直に気持ちを伝えてくれる奈々を更に強く抱きしめた。


「俺も好きだよ。…色々言葉が足りない時もあるかもしれないけど、本気で好きだから」

「うん。臣のこと信じてる」

「…ありがとう。なんかここ、くすぐってぇ」


胸元を指先で擦ると奈々がふわりと笑った。

柔らかいその笑顔に自然と俺も口端があがる。


「綺麗な顔…」


そんな俺の頬に手を添える奈々を引き寄せてそっと口づける。

何度しても足りない気になるんだけど。


「あ、ヤベェ。また成長してる…」


下半身を軽く押し付けると、奈々が苦笑いを零す。


「だめ、まだ。もっとこうしてたい。臣の温もりがもっとほしい…」


ギューって俺の背中に手を回す奈々が可愛くて何でもしてやりたくなる。


「可愛いすぎる」

「かっこよすぎる」


昔から感情を言葉にするのがそれ程得意じゃきった。

いつもかっこつけて何に対してもいいよ!って、適当に答えて。

それがかっこいいって勝手に思っていたんだ。

でも奈々は、俺のかっこ悪い部分も全部知った上で傍にいてくれる人で。

こんなに穏やかな気持ちでいられるのは奈々しかいないってマジで思う。

心地よさそうな顔をしている奈々に小さくキスを落とすとフフって笑った。


「もっと」


軽く唇を突き出す奈々の後頭部を引き寄せてまた小さなキスを落とす。


「ねぇ止まんなくなるって」

「じゃあいいよもう一回シても?」


女にそんなこと言わせたのなんて初めてで。

そんなこと言わなくてもそうされる女達とは格が違う奈々。

俺は奈々にも一生勝てないと思う。

でもそれが心地良い。

もちろん奈々の前ではいつだって強くかっこよくいたい。

自然体の登坂広臣を愛してくれる奈々を、俺は何年先も守っていきたい…




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