秘密の指切り2
「おはようございます!」
映画の舞台挨拶やら雑誌の取材やらで毎日忙しい日々を送っていた。
ハイローツアーも無事に終えたものの、疲れてんのか睡眠不足なのか、全く俺の風邪は治らなくて、たまに咳き込む俺を心配そうに奈々が見ている。
「臣、大丈夫?薬効かないね」
「んー。けど奈々の顔見たから今日は調子いいや」
あれから奈々には一切触れてない。
俺から触れちゃうと理性も吹っ飛びそうだし、ケジメの意味がなくなるから。
奈々もそれを分かっていてメイク以外で俺に触れることはなかった。
だけどこうやって身体が弱っている時は無性に甘えたくなる。
あー抱きしめたい。
「臣、口ばっかうまくなるねー」
「あーお前冗談にするなよ。マジで色々したいの我慢してんだから」
上目遣いで奈々を見上げるとカァーっと赤くなる。
そーいう反応たまんねぇ。
ペシッて頭を軽く叩かれて「変なこと言わない!」いやいやマジだから。
真剣な問題だって、俺も直人さんもね。
「あーそれよか奈々。直人さんがゆきみさん不足ってしぼんでたよ?」
「へ?直人さんが?」
「そう。たまには俺ん家に泊まりにくる?勿論、隆二や健二郎くんも呼ぶし。なんなら監視役に直己さんも呼ぶから!」
俺の言葉に黙り込む奈々。
それからカレンダーをジッと見つめる。
え?なんかあるの?
「…うん、行こうかな。さすがにあたしもゆきみ達の邪魔だなって思ってたから…」
いや俺結構冗談で言ったんだよね。
だって奈々が俺ん家来るなんて有り得ないって。
まさか奈々がイエスを出すなんてはなっから思ってなかったからちょっと拍子抜け。
やべ、部屋片付けねぇと!
「じゃあみんなに声かけとく。はい」
「え?」
「ほら早く」
小指を奈々の顔の前に差し出して指切り。
こんな女みてぇなことやる自分が馬鹿馬鹿しいと思いながらも、ほんの小指が触れただけで俺の心臓は有り得ないぐらいドキドキ爆音を立てているんだった。