100%の大好き3
「学生の頃奈々と出逢っていたかった…。したらこんな想いしなかったのに」
臣の言葉がずっと頭の中から離れない。
「ゆきみ、あのさ…。あたし達って今だからこういう気持ちになってるんじゃないかって思うの。…あの頃もしも臣や直人さんがいても、あたし達は二人と恋に落ちてたと思う?」
相変わらずの片岡邸。
直人さんがドラマの撮影で忙しいからって、ここで寝泊まりしているあたし。
畳の上に布団を敷いて二人でそこに寝転がって話しをしていた。
「臣くんに何か言われたの?」
「うん。学生のころあたしと出逢ってたら、こんな想いしなかった…って」
「なるほど…。私も奈々も、他なんて目に入ってなかったもんね…」
「うん。だけど言えなかった。臣にそう言われて、臣がそうあって欲しいって思ってるんだって考えたら、否定なんてできなくて…」
心が臣に傾いているのはもう分かっていた。
こんなに急激に臣を意識するとは思ってなかったから、自分でどう対応したらいいのか正直分からなくて戸惑ってしまう。
でもその度に隆二が助けてくれて…
「今の臣だから…」
―――こんなにも惹かれてしまうんじゃないんだろうか。
臣にだって過去がある。
あのエッセイの子に嫉妬してないわけじゃない。
でもあの子と出逢って恋をして、それで今の臣に繋がっているというのなら、もしもあたしと臣が運命だったとしたら、それも臣にとって必要な道だったに違いない。
「好きになった?」
ゆきみが真っ直ぐにあたしを見つめて静かに聞いた。
何かあったら全力で支えて味方になってくれるゆきみ。
「ズルイんだよ、臣。ご飯食べてる時、ずっと手繋いでたの…」
それが嬉しかったのはあたし。
こっそり内緒で繋いだ手に指を絡ませたのはあたし。
臣の温もりを離したくないって、思ったのはあたし。
隣に座ったあたしだけに歌ってくれたラブソング…
もういいかな…
「好き」って言っても、いいのかな…
ゆきみを見つめるあたしは臣への想いが溢れて止まらない。
自分の意志とは無関係に毎日募る臣への想い。
もう、嘘はつけない。
「それは確信犯だね、臣くん」
「でしょ。もうあたし、好きになっても仕方ないよね?」
「そうだね。それはズルイよ」
「…ゆきみ、ごめんね。あたし臣が好き。友樹がいるのにこんなにも臣が大好き…」
「うん、分かった。ありがとう素直に言ってくれて」
これからどうしたらいいか分からないけど、今分かってるのはあたしが臣を大好きだってこと。
「100%だった、臣を好きになる可能性…」
「仕方無いよ、それぐらい魅力的だもん…臣くんに限らずだけどね」
優しく微笑むゆきみに、あたしは涙を堪えて笑顔を返した。