隠しきれない動揺3
「おはようございます」
テレビ朝日のスタジオに移動して控え室に奈々が入ってきた。
声に振り返ると奈々もちょうど俺を見た所で。
何となく目を逸らしてしまう。
いや全くそんな気ないんだけど、真っ直ぐに奈々の目を見れない自分がいて。
さっき一人になって気持ちを切り替えたつもりだったけど、全然ダメじゃねぇ?
俺をジッと見つめている奈々が視界に入るけど、見返すことすら出来なくて…
「臣、どうかした?」
隆二が俺を見てそう聞いたんだ。
やっぱ分かる?
俺おかしいの、分かる?
「え、なにが?」
何もないよ!って顔でニコっと微笑むけど隆二はジッと見て、その後小さく溜息をついた。
「俺って頼りない?」
「え?」
「臣ってなに考えてるのか分かんない。辛い時も笑顔でいる必要ないよ?俺は臣のことちゃんと受け止めたいって思ってる。何でも話してほしい…―――」
”なに考えてるのか分かんない”
もう何度となく耳にしたこの言葉。
それが男であろうと、女であろうと。
動揺が隠せない。
普通にしたいのに、無駄に焦ってる自分がいて…
相方の隆二にまで迷惑かけらんねぇ…
分かってるけど焦れば焦るほどどうしたらいいか分かんなくて…
「パフォーマーちょっと集まって」
直人さんの声にハッとして顔をあげた。
「隆二とそれから…奈々ちゃんも来て?」
直人さん?
俺の前から隆二がいなくなって、奈々もそれに続いた。
やべぇ、どうしよう。
何でこんな焦ってんの、俺。
あの記事如きで。
奈々は知らないし、リーダー以外は知らない。
テレビの前のファンも知らない。
だったら俺が普通でいればいいだけ。
分かってる分かってる、大丈夫、全然問題ねぇ。
どうってことねぇ…――――「臣…」ふわりと甘い香りがして。
大好きで大嫌いなあのシャンプーの香り。
椅子に座って俯く俺を正面から抱きしめた奈々に涙が溢れそうになった。