隠しきれない動揺1
「広臣ちょっときて」
一週間が過ぎた頃、深刻な顔の直人さんと直己さんが俺を呼んだ。
相変わらず奈々との仲は曖昧だったものの、それでも自分の気持ちを奈々に伝えたことで俺の中ではすっきりとしていたんだ。
まれに見る直人さんのマジな顔に、思わずゴクリとつばを飲み込んだ。
俺なんかしたかな?
脳内で自分の行動を思い浮かべるものの、何も出てこない。
三人で会議室に行くと、そこにいたのはまさかのHIROさんで。
やっぱりただごとじゃない?
背中を無駄に冷や汗がつたう気分だ。
「お疲れ様です」
直人さんに続いて直己さんと俺もHIROさんに頭を下げる。
テーブルの上、そこにあったのは雑誌の原稿のようなもので。
「単刀直入に言うけど、来週発売の週刊誌に登坂の記事が掲載されるって連絡があったって…」
HIROさんは怒ったりしない。
そういう人じゃない。
でも…―――「すいません俺…」そこにあったのは由香との写真で。
あの日の飲み会の記事が書かれてあった。
あたかも俺達が付き合っている感じで。
つーかいつの間に写真撮られてたの?
しかも外で喋ってる写真までご丁寧にあった。
由香が俺の肩に頭をもたげている写真…これ誰がどっから撮ったんだよ?
信じらんねぇ…
あの女…俺を張ってたわけ?
はなっから週刊誌に売るつもりだったのかよ…
怒りで拳を強く握りしめた。
「広臣、この記事は事実?」
静かな声で直人さんが聞いた。
首を振って「違います、確かにクラブで一緒にいました。でも…こんなんじゃないです」…―――奈々に知られたらどうする?
「じゃあ内容は嘘ってことなんだね?」
直己さんの千里眼がキラリと光って見えた。
「もちろんです!誓ってこの子とはそういう関係じゃないです」
大声で否定する俺をニコリともせず真剣に見つめている直人さん。
ツーっと額から汗が滴り落ちたのを感じた。
「分かった、信じる。でも記事は出ちゃうから否定分出す?」
HIROさんの提案にのった。
「出します。すいませんご迷惑かけて」
「いいよ別に。登坂だけじゃなかったんでしょ?ここに居たの」
「はい。けど出したのは自分なんで。自分の不祥事です…本当に申し訳ありません」
立ち上がってガバっと深く頭を下げた。
「気にすんな!とは言えないけど、嘘ならちゃんと対処しないとだから。それだけ確認したかったの。後は俺に任せて。じゃあ直人後はお願い」
「はい。すいませんでした」
直人さんも直己さんも立ち上がってHIROさんに頭を下げる。
俺のせいで二人にも迷惑かけてる。
自分の置かれた立場がどんな場所にいるのか改めて気持ちを入れ替えなきゃって思った。