弱い男2



マジ、調子狂う。

つーか腹立つ。

何で俺のこと読むの?

俺そーいう感情滅多に出さないけど。

悲しい顔…なんて分かるわけないはずなのに…

俺の頬に触れるその小さくて細い手をギュっと握り締めた。

途端に逆転したように奈々がカアーって真っ赤になる。

彼氏いんのに男に免疫ねぇんだなって…。

今までその彼氏とだけしか愛し合ってないんだって…


「奈々…」

「ん〜?」

「今日デートしねぇ?」

「…はい?」

「デート!これ終わったら二人でどっか行こうよ?」

「…え、臣?」


意味が分からないって困惑した奈々の顔。

奇麗なその顔、俺が困らせてやりたい…

隆二じゃなくて、俺が。


「隆二に誘われてる?」

「へ?隆二?何も言われてないけど…」

「へぇ。案外奥手だな、アイツ」

「ちょっと臣、あたしデートなんて無理だよ」

「なんで?彼氏と約束ある?」

「…今日は、ないけど」

「んじゃゆきみさん?」

「それも、ないけど…」


ニコっと微笑む俺は奈々の頬に手を添える。

絶対ぇ隆二より先に奈々ともっと親密になる。

そんな感情が俺の中に沸き起こっていたのかもしれない…

だからちょっとだけ周りが見えてなかったんだ。

それを全部ジュリのせいにしてしまいたい…―――

俺ほどダメな男はきっとこの世にはいない。

それをみんなに悟られないように必死に生きているただの弱い男を、誰も好きになんてならないよな…。



奈々の返事もお構いなしに俺は一端家に帰ってから奈々の所に行くつもりでそういう約束を無理やりとりつけた。

さっきとはうって変わってルンルン気分な俺の前に現れたのは、困惑した表情の奈々と…ちょっとだけ怒った顔のゆきみさんと、思いっきり目の座った直人さんだったんだ…。






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