ヤキモチ 1





その日私は、芸能人と付き合うことの本当の意味を知った。




――――――――――



「シャワー浴びてくる」


そう言って洗面所に入って行った直人。

そんなに長風呂なんてしないけど、まだ入ったばかりの直人を追いかけるように私の視界に入る位置に置いてあった直人のスマホがブルブル振動している。

チラっと画面を覗くとMATSUさんって出ていて。

慌てて私はそのスマホを持って直人のいるお風呂場のドアを開けた。


「直人さんMATSUから!電話鳴ってる」

「え?あ、サンキュー」


そう言って振り返ってすぐに髪をスっと手で撫でてスマホを私から受け取った。


「お疲れ様っす!はい、今日すか?全然平気っす。いつもんところっすね!分かりましたすぐ行きます!」


チラっと私に視線を贈る直人。

これはいわゆる、メンバーからの呼び出しで。

以前にどこかの番組で、メンバーからの呼び出しには絶対応える……というのを聞いたことがある。

それは、私って恋人の存在があろうとなかろうと変わることはなく。


「はい、失礼します」


ピッとスマホを切ってそれを私に戻した。


「ごめん、MATSUさんとKEIJIさんからの誘い。行ってくるな」


有無をいわさない直人の告げ方に、私は「うん!気をつけてね」ニッコリ微笑んだ。

だけどそんな私を見てほんの少し眉毛を下げる直人。

シャワーのノズルを元の場所に戻して私に一歩歩を進める。


「直人さん?」

「いや、ごめんな。こーいうこと、これからも頻繁にあると思う」


申し訳なさそうに言うのは、私たちが2週間ぶりに一緒に過ごせる夜だったからなのか、それとも単なる優しさなのか、はたまたその両方なのか……

こういうので直人を困らせるような言葉はできれば言いたくない。

それを分かった上で私は直人の傍にいることを選んだんだと、むしろ分かって貰いたい。

元々分かっていたことだって。


「うん分かってるよ、そんなの!直人さんのそういう律儀なところも大好き」


そう言うと直人が安心したように微笑んだんだ。


「そっか、サンキュー」

「うん!あ、タオル今日新しいの買ったの使ってね!」

「おお、分かった」


直人の返事を聞いて、私はリビングに戻った。



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