余裕 1
HIROさんに挨拶をした私と直人は、そのまま三代目のみんなが待つお店に向かっているわけで。
そこでも正式にお付き合いすることをメンバーに発表するって、直人が。
こーいうことは最初が肝心だからって。
EXILEはさすがにメンバー全員予定が合わせられないから、とりあえず三代目って。
「ちょっと緊張するなぁ」
タクシーの中でそうボヤいた私の手を直人がキュッと握ったんだ。
でもその瞬間、ラジオから流れたEXILEの歌に、私も直人も思わず顔を見合わせて微笑んだ。
軽く直人が口ずさんでいたら、「彼氏、EXILE好きなの?」まさかの運転手さんにそんな質問をされて。
噴き出す私のことを、サングラス越しに睨む直人。
「そうっすね」
苦笑いでそう答える直人に、お腹がよじれそうなくらい可笑しくて。
「いいよなぁEXILE!俺もファンでなぁ!」
上機嫌なタクシーの運転手さん。
「どなたが好きなんですか?」
「そりゃATSUSHIだろ!彼女は?好きじゃないの?」
「大好きですよ私も」
「やっぱり、顔がいいTAKAHIROか?」
時に。
ここでyesと言ったら直人はどう反応するんだろうか?
この運転手さんは、直人の存在に今だ気づいていなくて。
私たち的にはその方が有り難かったりするんだけれど、EXILEパフォーマーとしてのNAOTOの「PRIDE」がそこにもあるわけで。
「私パフォーマーが好きなんですよ!」
そう答えてみたら、運転手さんがこう続けたんだ。
「AKIRAか?それともTETSUYA?最近はNAOTOも垢抜けてきたよなぁ!」
「………垢抜けて…」
「三代目も兼任してよくやってるよNAOTOとNAOKIは。感心する」
ニヤッて口端を緩める直人。
「運転手さん、分かってる!私の一番NAOTOさんです!本当素敵ですよね!」
私の言葉にとなりの直人は納得しているみたいに、何度も頷いていて。
「自分もNAOTOが好きっす」
聞かれていないのにそんなこと言っちゃって。
しばしNAOTOの話題で盛り上がってしまうなんて。
「着いたよ、彼氏!ああ、彼女いることはおじさん内緒にしといてやるな!うまくやれよ、NAOTO!」
タクシーを止めた運転手さんが、最後にそんな言葉を発して。
思わず顔を見合わせる私たち。
「え、あの……」
ちょっとしどろもどろしている直人に向かって、「ファンだって言っただろ」そう言って親指を上げて直人に突き出した運転手さん。
直人は笑いながらサングラスを外して「助かります、ありがとうございます!応援していただけて嬉しいっす」そう答えたんだ。