飲み会 1
ピンポーンって音が鳴った瞬間ドキンと胸が高鳴った。
そんな私を見てクスッと笑うたっくん。
「なによ?」
素直じゃない私はたっくんに対してもそんな言葉を放っていて。
「一ノ瀬さん、ドア開けてきてくださいよ?オレ今手が離せないんで」
それがたっくんのはからいだってわかってる。
分かってるけど、体が動いてしまうのが恋というものかもしれなくて。
「ハイハイ」
とか言いながらも、浮き足立っている自分がいるんだ。
たっくんの横を通り過ぎてパタパタと玄関まで行って鍵を開けてドアを開けた。
「わお!ゆきみちゃんのお出ましだ!」
そう言って簡単に私を胸に閉じ込める岩ちゃん。
どぎつい香水が鼻を掠めてクラクラする。
でもそれは岩ちゃんも同じだったのか。
「あれ、この匂い…んん?」
クンクン私の首元をかごうとして、後ろから今市くんに引っ張られていた。
「すいません、こいつ。マジ子供で」
眉毛をピクピクさせながら優しく微笑まれて思わずドキンとする。
その後ろにいる直人を見つけて思わず笑顔になっている自分がいて。
「待った?」
後ろからドヤ顔でそう聞かれて「はい」素直に答えている自分がいた。
あれ、やだ私ってば、直人には素直じゃん。
「あ、えっと、どうぞ」
岩ちゃんを先に入れると次々と中に入ってくるメンバー達。
さっきステージで見たそのまんまここにいるなんて、なんて夢みたいなんだろうか。
「お邪魔しまーす」
そう言って一番最後に直人が入った。
「眠くない?」
「え?大丈夫ですよ」
「寝かせないって言ったろ?覚悟しといて」
直人がそう言う如く、本当に酒を飲み続けるメンバー達。
代々木会場のlive最終日とあって、明日はみんなOFFを貰っているらしい。
だからって、すごいなぁ。
「レモンねぇな、もう」
キッチンでたっくんがぼやいたのが聞こえて。
「私買ってくるよ!まだあっちのスーパーやってるでしょ?」
「いやいや、オレが行きますって」
「でもここたっくん家だし、やっぱり私が行くよ。私がいない方が話せることもあるでしょ?」
「えーオレ行くぅー!ゆきみちゃんのボディガードするぅ」
完全に酔った岩ちゃんがそう言うけど、結構足元フラフラしてて、とてもじゃないけど、無理そうだ。
「オレ行くよ、どこ?」
言ったのは登坂くんで。
「や、vocalは目立つからオレ行く!寒いから暖かくしてこ?」
直人がコートを羽織ってそう言った。
すぐに別室からコートを取ってきてそれを着ると携帯と財布だけ持って直人と2人外に出た。