存在意義1


2016年を締めくくる五大ドームツアー本公演ファイナル、札幌ドーム公演。

12月24日、25日のクリスマス二日間…

大事なこのライブが中止になった。

三代目のライブに同行しているPKCZが函館移動の最中、悲しくも事故に遭った。

その大きなニュースは翌朝早く私の耳にも入ってきた。

眠りから覚めた私のLINEに直人からポツンと一言【明日帰る】…その文字が寂しそうで泣いてるように見えたんだ。

EXILEのメンバーでもある眞木さん達が骨折するという大事故に、時が止まったかのように思えた。

公演中止という四文字の中に、彼らの壮絶な思いがどれだけ含まれているのか。

ネット上で目にしたファンの声は、嘆き、悲しみ、怒り、悔しさ、もろもろ。

心配しているという思いに紛れて、本音は開催して欲しいという願いが沢山沢山寄せられている。

直人達に目にして欲しくない内容すらネット上に溢れかえっていた。

やむを得ず中止せざるを得なくなったこの状況に、直人が苦しんでいないはずがない。

責任を感じていないはずがない。

それ以上に心配しているはず、眞木さん達のことを。

…胸が痛い。

それでも私の元に帰ってきてくれる直人を私はしっかり受けとめないと!そう心に誓ってクリスマスツリーの飾り付けを始めた。


iPodから流れるクリスマスソングをBGMに直人の好きなワインと料理を準備する。

クリスマスだからチキンとケーキも。

それから大事なクリスマスプレゼントも。

クリスマスイヴの夜、直人が私達の家に帰ってきたんだ。




「お帰りなさい直人さん」



ガチャっと玄関の鍵が開いた音に迎えに行く私を見て、ほんのり眉毛を下げて微笑む直人。



「ただいま」



声が疲れてる。

いつも以上に低いその声に私はニッコリ微笑むと直人の手を引いて奥のリビングへと誘導する。



「わ、これ一人で?」

「うん!時間あったから飾ってみたんだけど、思ったより綺麗でしょ?ずっと眺めてても飽きないんだよー」

「…かもな。ゆきみみてぇ…」



そう言って直人はふわりと後ろから私を抱きしめた。

肩に顔を埋めるように私に寄りかかる直人の手をキュッと上から握る。



「大変だったね、直人さん。お疲れ様。眞木さん達、無事でよかった…無事に帰ってきてくれて、よかった…」

「…逢いたかったゆきみに…」

「直人…」



耳にかかる熱い吐息に胸の奥がキュンとする。



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