着信 1
直人に再会したした日からすでに一週間がたっていた。
もちろんのこと、残念ながら直人からの着信は一度もない。
私の番号も直人の携帯に出ているはずで。
だからもしかしたら直人からかかってくるんじゃないか?って、調子のいいことを思っていた。
けど、待てど待てど私のスマホに直人の番号が映し出されることはなくて。
「ま、そうだよね」
ふって笑った後、滅多にならない私のスマホが着信に震えて。
えっ!?
画面を見るとそこには直人の名前なんてなくて。
「もしもし…」
【一ノ瀬さん今日暇ですか?】
「…いきなりだね、たっくん」
【すいません。じつは今日この前のNAOTOさん達のliveがあって、チケット2枚貰ったから一緒に行きませんか?】
まさかのたっくんからの誘いに胸がドキンと跳ねた。
どどどうしよう。
直人に逢いたい。
逢いたいけど、逢ったらもっと好きになっちゃうよね。
でも、逢いたい。
脳内の葛藤なんてたぶんほんの一瞬で。
「行く!」
もう本能が直人に逢いたいって、言っているんだと。
その気持ちを素直に、直人に逢いに行っても許されるんじゃないかって。
【あ、よかった!何かメンバーがみんな一ノ瀬さんのこと気に入っちゃってて、呼べ呼べって煩いんっすよ。特にNAOTOさんが!】
たっくんの言葉を本気にはしないけど、そう言って貰えるのはとても嬉しくて。
「直人さんが?」
【はい。何か仕切りに一ノ瀬さんのこと聞かれましたオレ。何かありました?2人…】
「ないけど、何も。直人さん元気?」
【クソ煩いっすよ!】
「あは!じゃあえっと、どこに行けばいい?」
待ち合わせ場所と待ち合わせ時間を聞いて電話を切った。
ふぅーっと息を吐き出して、鏡を見ると嬉しそうに口角をあげていて。
私こんな顔だったっけ?
緩む頬を我慢しきれていない笑顔で「直人〜」名前を呼んでみた。
それと同時に、再び私のスマホが着信を鳴らした。