再会 1
あんなことがあっても、私の日常は何が変わるわけでもなく。
いつもと変わらない日々を過ごしていた。
たっくんにはあの日帰ったことを連絡したら、【直人さんにすげぇ怒られました、本当すみませんでした】ってLINEが来たっきりだった。
それに対して何度も私は「大丈夫」と言ったのだから、これ以上何も言う必要なんてないって思って。
このまま何ごともなかったように時は進んでいくんだって、そう思っていた。
――――――そう、今日までは。
金曜日の夕方。
真っ直ぐ帰るのも勿体なくて、乗り換え駅の駅ビルで流行りのファッションを眺めていて…
「一ノ瀬さん?」
…え?
声に振り返ると、そこには黒ずくめのサングラスの男がいて…
この出で立ち…まさかとは思うけど…「直人さん?」私がそう言うと、サングラスをちょこっとだけずらして可愛い目を見せたんだ。
「久しぶり!」
まさかの直人から声をかけてくれて。
両手で顔を隠しながらペコっと頭を下げたんだ。
キョロキョロ周りを見回してみるとそこには特に誰もいなさそうで…
「お一人ですか?」
「うん。ちょっと時間空いたから」
「なるほど…。あ、その節はすみませんでした」
「いやオレ何もしてないし…むしろ拓が迷惑かけてこっちこそごめんね」
「いえいえ。たっくんには感謝してます。あれ以来先輩には避けられてるんで、私!」
そう言って笑うと、直人もほんの少し微笑んだ。
たっくんとはどういう友達なんだろう?…そう思ってそれを聞こうとしたその時、直人がハッとしたようにジャケットのポケットからスマホを取り出して。
「あ、ちょっとごめんね?」
私に向かって頭を下げたから「どうぞ」ちいさく言うと、少し私から離れてスマホを耳に宛てた。
その姿を見てドキドキする鼓動を抑えようとするけど、一向におさまらなくて。
こんな偶然あるんだ!なんて嬉しくなった。
あの時はもう、直人に逢いたくない…なんて思ったけど、今逢えて…すごく嬉しいわけで。
小さいな〜なんて思っていたら、直人がスマホを閉まってこっちに戻ってきた。