リアルキュン 4
「直人…電話…」
「無理!」
即答だった。
いつもだったら速攻電話に出るのに、今日に限って直人は私の上から下りなくて…
柔らかい直人の髪をフワっと撫ぜると眉毛を下げて私の耳元で呟いたんだ。
「直ちゃんすでに半勃ちよ…どうしてくれんの、ゆきみ!」
思わずブハって吹き出す私から下りずに手を伸ばしてスマホを取った。
画面を見て「んにゃろう…」そう言う。
そう言うってことはきっと後輩なわけで…
「誰だった?」
「ん〜」
「たかのり!?」
「うおおおおおおおっいいいいっ!!何でたかのり呼びよ!?」
思いっきり私に体重を乗せてそう叫んだ。
これは時々見る直人のヤキモチであって。
それが見たくてあえて岩ちゃんを「たかのり」って呼んでやった。
顎を掴まれて「答えろ、ゆきみ!」強引に私を組みふせていて。
「だって”たかのり”がキュンポイントって言ってた、岩ちゃん!」
「アホかぁ!!ゆきみにこれ以上キュンキュンさせてたまっか!!」
「電話、たかのりだったの?」
「…そうだけど!」
「私でたい!!」
腕を伸ばすとその手を掴まれて「絶対ぇ出させねぇ!!」そう言う直人の腕からスマホを抜き取って「たかのり!?」そう叫んでやった。
【…ゆきみちゃん?】
「うん!どうしたの?」
【直人さん取り込み中?】
「うん、直人さん今半分取り込み中みたい!」
「うおおおおおいいっ!!ちょ、変われ!」
直人の手が耳元からスマホを抜き取って。
「なに、岩ちゃん」
話しながらも私から下りない直人がやっぱり可笑しくて、ちょっと悪戯心がうまれちゃって、ムギュって直ちゃんを握ってみた。
「あふっ!!」
思いっきり眼球を私に向ける直人。
「岩ちゃん悪い、10分だけ待って。かけ直す!」
そう言った直人はスマホを床に投げ捨てると、ニヤってしながら私を見下ろした。
「やってくれるな、ゆきみ!覚悟しろよ!!」
「キャッ!!」
「…喜んでる、さてはお前確信犯だな!!オレをおちょくりやがって、マジ鳴かせてやる!!」
「望むところだ!!」
私の言葉に「責任とってよね、直ちゃんの」そう笑って直人の温もりが落ちてきた。
結局10分じゃ終わらなくて、30分後に電話をかけ直した直人は、案の定、三代目全員にからかわれることになる…―――――
でも、私との時間を優先してくれたって事実が最高に嬉しい…
そんな日もたまには許されるよね。
*END*