リアルキュン 1
「…直ちゃん…」
「えっ!?」
「………」
「ゆきみ?」
「…直人さんのバカ」
「バカ?」
「テレビであんなこと言うから…コメントがみんな直ちゃん呼びしてる…」
ちきしょう。
ちっきしょう!!
こんちっきしょうめが!!!!
ブスッ面の私の手中にあるスマホを見て「あ、俺のインスタ!」なんてすっとぼけた声を出す直人。
それから私を見てほんの軽く苦笑いを飛ばした。
「直ちゃんって私が呼べなくなっちゃうじゃないか」
完全に馬鹿な女のくだらないヤキモチだって分かっている。
分かっているし、仕方のないことだと思う。
今ここにいるのが私だけど、もしも私があの日直人と出逢うこともなく、ただのファンだったのなら、間違いなく私も直ちゃん!ってコメントしているんじゃないか…とすら思う。
何となくまだ直人って呼べなくて。
感情が高ぶった時限定で私は彼を直人って呼んでいる。
そして直ちゃんも可愛いなーなんて思い始めていた頃だったから。
タイミングが悪かったといえばそうで。
「ゆきみ?」
「なに、直人さん」
「呼んでよ直ちゃんって…」
ニコッて笑ってそう言うんだ。
その笑顔は今でも簡単に私の心を突き刺す。
ハートがついた矢でズキュンと。
「呼ばない」
「なんでっ!?」
軽く微笑みながら聞く直人は、いつも通りの余裕の表情で。
悔しいけど、それがまた最高にかっこいいんだ。