二人きり


――――――――――
――――――
―――




驚いた顔の私を見て、隣の直人は苦笑いで。


「…直人さん今日liveだったよね?お疲れさま」


質問しておきながらなんだけど、聞こえないフリをしたんだ。

ま、この顔は嘘なんてつけないけど。

それでも今ここで何かが変わる訳でもないから。

もしかしたら直人は私に誰にも聞かれたくない相談があるのかもしれないし。

それなら納得できる。

うん、そうに違いない。


「うん、身体バッキバキ!」


ふにゃって柔らかい言葉を飛ばす直人は確かに疲れた顔で。


「マッサージしてあげようか?」


私の言葉に「マジ?」可愛い笑顔をくれた。


「寄っかかってもいい?」


それからそう聞かれて。

え?寄っかかる?

なにそれ…それって…「いいよ〜って」…私の真似をしたのか、ちょっとだけ女っぽい声でそう言うと、コテンっと直人の頭が私の肩に触れたんだ。


…うそぅ!!

こんなのヤバイよ。



「な、直人さん…」

「ん〜?」

「大丈夫?」

「ダメかも〜」

「…ええ…」

「もうすぐつくからこのままでいてよ」


そう言った直人の声はほんの少し弱弱しいというか…

こんな展開全く予想外で。

自分の脳内では呆れるくらいすごい妄想をしてはいたけど…実際は妄想止まりであり得ないって思っていたから。

直人が私ごとき一般人に本気になるわけもないし、そういう対象で見るなんてこともないって…分かってる。


のに、チラっと右側に寄りかかっている直人に視線を向けると、綺麗な顔が目を閉じていて…



「直人さんお疲れだね」



そう言ったらギョロっと目が開いたんだ。

私を見る目元は真っ直ぐで、でも口元に笑みを浮かべていて。

心の中に浮かんだのは、モバイルサイトでHIROさんが言った「NAOTOは計算だから!」…その言葉だったんだ。


―――
―――――
――――――――――


- 6 -

prev / next

[TOP]