ヤキモチ 3
そんなわけで、直人の部屋で一人になった私は、とりあえずのご飯を求めてコンビニに行った。
適当に買ってまた直人の部屋に戻る。
楽しみにしていたそのDVDをデッキにセットして、映像が出るのをひた待った。
「これがオールロスでの撮影かぁ!」
ほろよいの白サワーをパコンと開けてグイッと飲む。
映し出された映像にただ圧倒された。
でも……始まって数秒で気づくその違和感。
「え、これ……」
私の視界が捉えたのは隆二くんやらエリーちゃんやらの女子との絡みシーンで。
ロスの撮影の時にInstagramで見つけた女性との写真がほんの一瞬頭に浮かんだ。
直人なんも言ってなかったよな。
そう思った私に、その映像は胸を突き刺すかのようで、口に入れようとしたサラダをそっとお皿に戻させたんだ。
でもだからこその、さっきの直人の一瞬ハッとしたような表情が浮かんだわけで。
ちょっとだけ胸が苦しい。
勿論お仕事だって頭では理解している。
だけどやっぱり気持ちはついていかなくて。
崖っぷちに立っていた私を、奈落の底に突き落とすかのような、そんなシーンだったんだ。
その映像を見ただけでジワリと涙が溢れてきて。
今ここに直人がいなくてよかったと思わずにはいられない。
ダンスは相変わらずのドヤ顔オンパレードで、すごく素敵な作品だって素人の私でも分かるくらい。
それなのに、1度胸に刺さった矢は、そう簡単に抜けそうもなくて。
どうしたらいいのか分からなかった。
ただ呆然と時間だけが過ぎていく。
カチカチカチカチ……聞こえるのは時計の秒針が動く音だけで。
サラダすら喉を通らない。
涙は止まったけれど、心の中にぽっかりと空いてしまった穴は塞がってはくれない。
MVで外人女子を後ろから抱きしめていた。
たったそれだけのことなのに。
直人が少し遠く感じた。
さっき私を強く抱きしめてくれたあの腕が、私以外の女子に触れたと思うとそれだけなのに苦しいんだ。
馬鹿みたいこんな気持ち。
直人がここにいないことは理解できていても、直人の仕事を受け止められないことの方がダメなんじゃないかって。
色んな気持ちがごちゃまぜになって、また喉の奥が痛くなる。
目頭が熱くなってどうしよもなくて、伸ばしたスマホで一言告げたんだ、唯一無二の親友に「助けて」って。