余裕 5




「適わねぇ、やっぱ直人さんには」



そんな言葉を残してタクシーで帰って行った岩ちゃん。



相変わらずとなりの直人は飄々としている。


「余裕なの?」


私が聞くと、サングラスのまま顔をこちらに向ける直人。


「余裕なわけないじゃん!たく、岩ちゃんどんだけゆきみが好きなんだっつーの!」


意外な反応で、ちょっと嬉しい。

だって本当に私のことどーでもいい!とまでは言わないけど、全く気にしていないように見えたから。


「すごいね直人さん。顔に一切出てないよ!私放ったらかしにされて、あわよくば岩ちゃんに遊ばれるのかと思ったのに!」

「させねぇし」

「え?」

「付き合ってます宣言しといて、俺の俺の言うたらかっこ悪いやろー」


キョトンと直人を見ていた私は、ぷぷって笑った。


「なんで関西弁?」

「なんとなく!ニュアンスだよ!」


眉毛を下げている直人を見て、本当に余裕なわけじゃなかったんだって分かって、やっぱり嬉しくなる。

目の前のこの人が物凄く可愛くてかっこよくて……


「直人さん、一々かっこいいなぁ、もう」


ボソッと聞こえるか聞こえないかぐらいで呟いた私の声をしっかりと拾ってドヤ顔を飛ばす直人。

それすら、かっこいい。


「EXILEメンバーにはまた後日少しづつ紹介して行くからな!」

「うん。……てっちゃんドキドキする……」


そう言ったらギョッとした顔で直人が私を見て。


「俺聞いてないじゃん!!」


なんだか物凄い形相で私を凝視する直人。

その顔は困ってるようにも、ちょっと拗ねてるようにも見えて。


「俺の次に誰が好きか言ってみろ!!」


腕を掴まれて真剣な顔で言われた。

あまりにその顔が真剣過ぎて思わず一歩後ずさった。

そんな私にまた近づく直人。


「え、やだ!怖いっ直人っ!」

「言え!いやむしろ吐け!!」


小走りで逃げる私を全力で追いかけてくる直人にすぐに捕まって……


「言うまで気持ちーことしてやんねぇ!!」


そんな言葉を飛ばす直人に、残念に思った本音は隠しておこうっと。


そう、言いながらも直人はきっと最高の時間を私にくれるんだって分かっているから。


「直人だけだって!」

「嘘つけ!さっきてっちゃんって言ったろ!?おい、こら、ゆきみ!逃げんなっ!」



こうやって私たち、少しづつ距離を縮めていけたらいいなって思う。



*END*

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