余裕 2


「うーわやられたな」


お釣りを財布にしまいながら直人がボソッと呟いて。

まさかの、気づかれないパターンを予想していたから、私も笑ってしまうわけで。


「俺垢抜けちゃった感じ?」


嬉しそうに口端を上げてサングラスのまま私を見つめる直人。

何だか知らない人に直人を褒められるなんてそれは私も嬉しくて。

素直に喜びを見せる直人も愛おしいんだ。


「あは、そうみたいね」

「ちょっと嬉しい」

「謙虚だよね、直人さん」

「当然!それがEXILEだから。あ、惚れなおした?」


ニヤッて私の手を引いてお店のエレベーターへと導く直人。


「うん、毎日惚れ直してる」


私の言葉に満足そうに笑うと、直人は繋がってる手を引っ張ってそのまま私の背中に腕を回した。


「直人?」

「2人きり」


そう言って私に顔を寄せた。

2人きりのエレベーターの中、目的の階に着くまでのほんの一時、直人の甘いキスがおりてきた……

唇が触れ合った瞬間、背中に回された腕が更にきつく私を抱いて、唇を食べるみたいにムニュって重ねる直人。

そうやって何度か唇を合わせるだけのキスを繰り返して……

ほんの離れた瞬間うっすら目を開けると、目を閉じた直人のドアップがあって、途端にドキドキする。

俗に言うキス顔拝見の私はもう心臓壊れそうで……

直人に寄り掛かるみたいに体を預けた。


「…ゆきみ…」

「うん」

「足りなくね?」


え?足りない?

一瞬直人が言ってる意味が分からなくて、でも唇すれすれで話すから、やっぱりドキドキしちゃって、意味も分からず「うん」って答えたら、チーンってエレベーターが目的の階に着いた。

その瞬間、直人の手がまたエレベーターを閉めるボタンに触れて、そのまま最上階のボタンを押した。

ギリギリドアが締まったところで、直人が壁に私を追い込んで、そのまま激しく唇をこじ開けて直人の舌が入り込んできた。

さっきまでのキスとはまるで違って息をつく暇もないくらいのそれに息があがる。

首に添えられた直人の手が甘く私の首元から下に下がっていく。

体のラインをなぞるように触るから足がガクガクしそうで、支えるように腰に腕をかけられて、強く壁から剥がされて抱えられるみたいに抱き締められる。

力強い腕と、それとは裏腹な甘いキスに、思わずここがエレベーターの中だってことすら忘れそうで、実際忘れていて……

最上階でチーンってドアが開いてハッとする。

慌てて離れる私だけど、ドアの向こうは誰もいなくて。


「あ、いない。よかった…直人のキス顔見ちゃったよ私!」

「知ってる!見てるの分かってた。だから見せてやった!」


得意気にドヤ顔でそう言うからポンッて直人の腕を叩くと、その手をギュッと握りしめられて。


「続きは今夜な」


ポンポンって私の頭を撫ぜた。

じつはまだ直人と完全に繋がっていない私たち。

HIROさんへの挨拶が終わってからってあの日、沢山のキスをくれた直人と抱き合って眠ったんだ。

だから今夜……そう思うと心臓がバクバクいってどうにかなっちゃいそうで。


「俺も緊張してるから」


まさかの直人の言葉に少しだけ緊張が和らいだ。

そうして私たちが個室に入ると、みんなが私を見て笑顔で迎えてくれたんだ。


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