一週間 4


「え?私変なこと言った?」


キョトンとしている私を見てたっくんはブハッと笑い出したんだ。

そんなたっくんを見て意味不明って顔を見せる私に肩をポンポンって叩かれて。


「一週間っすか?」


そう聞かれた。

だからコクンって頷いたらやっぱりたっくんは笑っていて。


「たかが一週間っすよね?!そんなに我慢できなかったの?」

「…えだって、毎日来てたんだよ…」

「へぇ〜毎日ねぇ!本当に二人、付き合ってないんっすか?」

「まさかっ!!」

「でも好きなんすよね?一ノ瀬さんは」

「…はい」

「あっは、認めた!可愛いっすよ、今の一ノ瀬さん!」

「いやそういうのいらないから…」

「あはは、俺今電話してみましょうか?」


たっくんに言われてドキンと胸が高鳴った。

まさかそんなことを言われると思ってもみなくて。

私の返事を待っているようで待っていなかったらしいたっくんは、スマホのLINEを開くと、通話ボタンを押した。


「えっ、待っ!」

「あ、直人さん?」


…うそ。

繋がってる…。

は、早くない!?

動揺する私を前に、たっくんはニコっと笑うと人差し指を口の前で立てて私の言葉を塞いだんだ。



「何してんっすか?俺?俺は暇で…直人さんもどうせ暇かな?って思って…あはははは、マジっすか?そういやこの前一ノ瀬さんと会ったんっすけど…オトコと一緒でした。直人さんいいんっすか?」



…――――拓海め!!!

なんてことを!!



「またまた〜」


…拒否ですか、直人さん。

何をどう言ったのか分からないけど、直人の答えを聞くのは怖くて。



「あの人本当隙だらけっすよね。何かほおっておけないって言うか…。はは、でしょ?けど俺…一ノ瀬さんは直人さんのこと好きにしか見えないっすよ。一応言っておきますけど、俺の先輩なんで、傷つけるようなことはしないで欲しいっつーか…」


…そんな言い方。

直人の言葉が聞こえないけど、たっくんに私への想いを直人が言うわけないって思う。



「俺、岩ちゃんは遊んでるだけとしか見えませんでしたけど?直人さん前に岩ちゃんの女でもとったことあるんすか?…ですよね。ならやっぱり遊び!」


…一週間連絡が来なかった理由が岩ちゃんなのか、違うのか。

忙しくて連絡できなかった…そうであって欲しいって強く思うんだ。

これから先も私と直人さんの関係は変わらないって。

くっつきもしなくていいから、離れもしないでって…



「そうっすね。そろそろ一ノ瀬さんが俺ん家に来る頃かも!え?いやなんか…話があるって。相談にのって欲しいって…。俺にしか言えないことみたいっすけど…。だからそろそろ…―――え?…気になります?はは。素直じゃないっすね、直人さんは。一ノ瀬さんは素直に認めましたよ、直人さんが好きだって!!…嘘か本当かは、自分で確かめて下さいね!じゃまた!」


ピッ。

…電話を切ったたっくんの視線が私に飛んできて。

ふわっとその手が私の髪に触れた。



「大丈夫っすよ。直人さんって真剣になればなるほど、慎重に考えて行動しちゃう人なんで。岩ちゃんのことかなり警戒してるみたいで。それでたぶん一歩踏み出せないんじゃないかなって、俺は勝手に思ってます」

「…うん、ありがとう」

「二人の間に何があったかは聞きませんけど、葉っぱかけといたんで、直人さんが本気なら、絶対に連絡くるって思います。そういう人です、直人さんは」



私は知らない直人の性格。

いつからたっくんと直人が友達なのかなんて知らないけど、たっくんが言ったこの言葉は真実味を帯びていて。

直人との未来を夢見てもいい…そう言われたような気がしたんだ。



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