一週間 1
「岩ちゃんがマジごめんね」
別れ際、そう言った直人。
何をどうっていう説明はしてなくて。
それでも何となく察してくれたのか、直人は私が泣いた理由をそれ以上聞いてはこなかったんだ。
直人に抱きしめられて嬉しかった半面、キスは違ったんだって思うと恥ずかしくて。
まだ頭の中がちゃんと整理できていない私。
それでも直人を想う気持ちだけはハッキリとしていて。
「直人さんありがとう」
「なにが?」
「逢ってくれて…」
「うん。俺も逢いたかったから、ゆきみちゃんに…」
「ほんと?」
「自慢じゃないけど、嘘つけないんだよね俺」
「自慢ぽいけど?」
「違うって!正直なのよ俺!」
直人らしいやって笑うと、直人も同じように笑顔を返してくれた。
「送れなくてごめんな」
「気にしないで」
「それじゃ、気を付けて」
そう言うと、直人は私の乗っているタクシーから一歩離れた。
運転手さんに向かって「お願いします」って言ってパタンとドアが閉まったんだ。
軽く右手をあげる直人に向かって小さく手を振り返す私に、サングラス越しに白い歯を見せてくれた。
そうして数時間前の重苦しい空気とは一変して、私はフワフワした気持ちで自分の家に帰った。