一週間 1


「岩ちゃんがマジごめんね」


別れ際、そう言った直人。

何をどうっていう説明はしてなくて。

それでも何となく察してくれたのか、直人は私が泣いた理由をそれ以上聞いてはこなかったんだ。

直人に抱きしめられて嬉しかった半面、キスは違ったんだって思うと恥ずかしくて。

まだ頭の中がちゃんと整理できていない私。

それでも直人を想う気持ちだけはハッキリとしていて。


「直人さんありがとう」

「なにが?」

「逢ってくれて…」

「うん。俺も逢いたかったから、ゆきみちゃんに…」

「ほんと?」

「自慢じゃないけど、嘘つけないんだよね俺」

「自慢ぽいけど?」

「違うって!正直なのよ俺!」


直人らしいやって笑うと、直人も同じように笑顔を返してくれた。


「送れなくてごめんな」

「気にしないで」

「それじゃ、気を付けて」


そう言うと、直人は私の乗っているタクシーから一歩離れた。

運転手さんに向かって「お願いします」って言ってパタンとドアが閉まったんだ。

軽く右手をあげる直人に向かって小さく手を振り返す私に、サングラス越しに白い歯を見せてくれた。

そうして数時間前の重苦しい空気とは一変して、私はフワフワした気持ちで自分の家に帰った。



- 41 -

prev / next

[TOP]