出逢い 1
はぁー…。
飲み屋のトイレで鏡に映った自分の顔を見て大きく溜息をついた。
嫌な相手と二人で飲みに来たものの、やっぱり嫌な気持ちは消えなくて。
少なからず私のことを良いと言ってくれている人だからその気持ちは嬉しいのだけれど、どうも気が合わない。
もう帰りたいな…
そんな気持ちばかりが早まって中々トイレから出ることができないでいる。
それでもそんなに長くいたら具合が悪いと思われるだろうって、仕方無しに気持ちを切り替えて戻ろうとトイレを出た所で、ふと足を止めた。
目の前の個室から出てきたのは以前一緒に働いていた後輩にそっくりで。
そっくりっていうよりは、本人で。
「たっくん?」
そう声をかけたら、振り返った顔が一瞬吃驚したけどすぐに微笑んだんだ。
「一ノ瀬さん!何してんすか!?」
「やっぱりたっくんだ!久しぶり。会社の先輩と飲みに来てて…」
「そうなんですね!オレも友達と飲んでて…」
ニコッと微笑むたっくんを見て思いついたんだ。
「たっくん。お願いがあるんだけど…」
「なんすか?」
「 …助けてぇー」
「へっ!?」
たっくんの腕を掴んでそう言うとちょっと吃驚したように私を見下ろした。
「一ノ瀬さん?」
たっくんが私を覗き込んだその瞬間、個室のドアがあいて中から人が顔を出した。
「拓、何してんだよ?」
声と同時に私はたっくんを掴んだまま視線を向けて…――――
「あ、どうも」
私を見てご丁寧に頭を下げるその人達を見て口があんぐり開いたんだ。