逢いたくて… 3
「一ノ瀬ゆきみさん、入ります!」
スタッフさんに背中を押されて、綺麗なワンピースに着替えた私は、明るいライトで照らされた場所に入った。
岩ちゃんがしっかりと私を誘導してくれているけど、もう意識が朦朧としてしまう。
こんなに緊張したの初めてってぐらいで。
「岩ちゃん私どうしたらいい?」
「オレに抱きついててくれればいいよ、ゆきみちゃんは。後は全部オレに任せて?」
「…抱きつくんだ…」
「そう。ゆきみちゃんの顔は見せないようにするって。シルエットだけね」
「…シルエット…」
「大丈夫?深呼吸して、大きくゆっくり」
「う、うん…」
岩ちゃんに言われて大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出した。
数回繰り返していると、少し意識が戻ってきて。
「相手が直人さんだと思えばいいよ?」
「…別に直人さんのことは私…」
「え?好きじゃないの?」
「…それは勿論好きだけど、恋愛対象に見てる訳じゃないもん…」
「じゃあやっぱオレと付き合わない?」
「…岩ちゃんより直人がいい…」
「げ…今の痛い!オレ傷ついたわ〜」
「…あははは、ごめんね!」
思わず話し込んでいて笑った瞬間、カシャっと音がした。
と思ったらカシャカシャ物凄い数の音が鳴っていて…
「オレの話術もすごいでしょ?」
得意気に岩ちゃんが言うから「うん、ちょっと撮影忘れた」すっかり緊張がほぐれていたんだ。
でも…―――――――
「じゃあ次、ベッドに移動して!」
監督さんの声にまた思考が止まりそうになった。
「なぜベッド?」
「オレの濡れシーン!」
「ええっ!?」
「楽しみ〜」
私を引っ張ってルンルンで歩く岩ちゃん。
聞いてませんけど、ベッドなんて!!
岩ちゃんの濡れシーンに私なんて必要ないよ!
なんて思っていても言えるわけもなく…。
本当に用意されていたベッドを見て固まってしまう。